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家族性高コレステロール血症とは?

  • 執筆者の写真: HEIWA SOTOMURA
    HEIWA SOTOMURA
  • 6 日前
  • 読了時間: 21分

更新日:5 日前


健康診断でコレステロール値が異常に高いと指摘された方、あるいはご親族に若くして心筋梗塞になった方がいて、ご自身の健康に不安を感じていませんか。その原因、食生活や運動不足だけだと思い込んでいるとしたら、注意が必要です。

実は、日本人の約300人に1人が該当するとされる遺伝性の病気「家族性高コレステロール血症」かもしれません。この病気は生まれつき悪玉コレステロール値が高く、自覚症状がないまま若い頃から動脈硬化が進行し、気づかぬうちに命に関わる心臓病のリスクを急増させます。

しかし、この病気は早期に発見し、生涯にわたる適切な治療を続けることで、将来のリスクを大幅に減らすことが可能です。この記事では、見逃してはいけない体のサインから最新の治療法までを詳しく解説し、あなたの未来の健康を守るための道筋を示します。



家族性高コレステロール血症を疑うサインと診断の流れ

「健康診断でコレステロールが異常に高い」「親族に若くして心筋梗塞になった人がいる」。 このような経験から、ご自身の健康に不安を感じていませんか。

家族性高コレステロール血症(FH)は、遺伝が原因で生まれつきLDL(悪玉)コレステロール値が高くなる病気です。 日本人の約300人に1人がこの病気を持っているとされ、決して珍しいものではありません。

気づかずに放置すると、若い頃から動脈硬化が急速に進み、命に関わる心臓の病気を引き起こす可能性があります。 ここでは、この病気を疑うべき体のサインや、診断に至るまでの流れを詳しく解説します。


手の甲やアキレス腱にできる黄色いしこり(黄色腫)

家族性高コレステロール血症の重要なサインとして、体に現れる特徴的な変化が「黄色腫(おうしょくしゅ)」です。 これは、血液中にあふれた過剰なコレステロールが、皮膚の下や腱(けん)に沈着してできる、黄色みがかったしこりのことです。

痛みなどの自覚症状はほとんどないため見過ごされがちですが、診断の非常に有力な手がかりとなります。 黄色腫は、できる場所によっていくつかの種類に分けられます。

黄色腫の種類

できやすい場所

特徴

腱黄色腫

アキレス腱、手の甲の腱、肘、膝

腱が硬く太くなるのが特徴です。特にアキレス腱の肥厚は重要で、触るとゴツゴツした硬いしこりとして感じられます。

皮膚結節性黄色腫

肘、膝、お尻

皮膚にできる硬いしこりです。

眼瞼黄色腫

上まぶたや下まぶたの内側

黄色みを帯びた、平たく少し盛り上がった斑点ができます。中年以降の方によく見られ、これだけではFHと限りません。

ご自身やご家族の体にこのようなしこりを見つけた場合は、放置せずに医療機関へ相談することをお勧めします。


未治療時のLDLコレステロール値180mg/dL以上という基準

家族性高コレステロール血症の診断において、血液検査の数値は客観的で重要な指標です。 特に注目すべきなのが、「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」の値です。

診断基準の柱の一つに、「薬物治療を一度も受けたことがない状態でのLDLコレステロール値が180mg/dL以上」であることが挙げられます。

項目

解説

LDLコレステロール

「悪玉」と呼ばれ、増えすぎると血管の壁に蓄積して動脈硬化を進める元凶となります。

診断基準の値

180mg/dL以上(未治療時)

「未治療時」の重要性

すでに薬を飲んでいると、本来の値よりも低く測定されます。そのため、正確な診断のためには治療開始前の数値が極めて重要です。

健康診断でLDLコレステロール値が180mg/dL以上だった方は、自覚症状がなくてもこの病気の可能性を考える必要があります。 成人における家族性高コレステロール血症は、以下のチェックリストのうち2つ以上を満たす場合に診断されます。


【家族性高コレステロール血症(成人)診断チェックリスト】


  • 高LDLコレステロール血症

    薬で治療する前のLDLコレステロール値が180mg/dL以上である。


  • 身体所見

    手の甲やアキレス腱に硬いしこり(腱黄色腫)がある。


  • 家族歴

    親、兄弟、子ども(第一度近親者)に、FHと診断された人や、若くして心筋梗塞・狭心症になった人がいる。(男性:55歳未満、女性:65歳未満)


健康診断の結果は大切に保管し、基準値を超えている場合は決して放置しないでください。


一般的な脂質異常症(高コレステロール血症)との決定的な違い

「コレステロールが高い」原因として、多くの方は食生活や運動不足を思い浮かべるでしょう。 しかし、家族性高コレステロール血症は、生活習慣が主な原因の一般的な脂質異常症とは根本的に異なります。

最大の違いは、その原因と生涯にわたるリスクの高さです。 一般的な脂質異常症が後天的な要因で発症するのに対し、FHは生まれつきの遺伝子変異が原因です。 これにより、肝臓が血液中のLDLコレステロールをうまく回収できず、子どもの頃から極めて高い値を示します。

その結果、動脈硬化の進行スピードが非常に速く、若くして心筋梗塞や狭心症を発症するリスクが格段に高まります。

比較項目

家族性高コレステロール血症(FH)

一般的な脂質異常症

主な原因

遺伝子の変異(生まれつき)

生活習慣(食事、運動不足、加齢など)

LDLコレステロール値

著しく高い(未治療時180mg/dL以上が目安)

軽度〜中等度の上昇

動脈硬化の進行

子どもの頃から急速に進行する

主に中高年以降に緩やかに進行する

心筋梗塞などの発症

男性は20代から、女性は30代からリスクが急増

一般的に50代以降にリスクが高まる

治療

早期からの薬物療法が必須となる

まずは生活習慣の改善が中心となる

この病気は「自己管理ができていない」からではなく、遺伝的な体質によるものです。 早期に正しい診断を受け、適切な治療を始めることが、将来の深刻な病気を防ぐために何よりも重要です。


診断のために何科を受診すればよいか

ご自身の症状や健康診断の結果、家族の病歴から「もしかしたら」と不安に思われたら、専門の医療機関を受診しましょう。

まずは、健康診断の結果を持参して、かかりつけの内科医に相談するのが第一歩です。 かかりつけ医がいない場合は、総合内科や一般内科を受診してください。 大抵の場合には内科クリニックのみで対応が可能ですが、そこで専門的な検査や治療が必要と判断された場合、以下の診療科を紹介されることが一般的です。


  • 循環器内科

    心臓や血管の病気を専門とします。FHが引き起こす心筋梗塞や狭心症の予防と管理において、中心的な役割を担います。


  • 内分泌・代謝内科

    ホルモンや代謝の異常を専門とします。脂質代謝の異常であるFHの診断や、専門的な薬物治療を行います。


受診の際には、以下の情報を整理しておくと、診察がスムーズに進み、より正確な診断につながります。


【受診時に医師に伝えてほしい情報】


  • 過去の健康診断の結果

    できれば複数年分を持参し、コレステロール値の推移がわかるようにしましょう。


  • ご自身の体のサイン

    アキレス腱が太い、体に黄色いしこりがあるなど、気になる変化を伝えましょう。


  • ご家族の詳しい病歴

    両親、兄弟、祖父母の中に、高コレステロール血症、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞になった人がいないか。

    もしいる場合、「誰が」「何歳で」「何の病気になったか」を具体的に確認しておきましょう。


早期発見と治療開始が、あなたの未来の健康を守る鍵となります。 少しでも気になることがあれば、ためらわずに専門医へご相談ください。



家族性高コレステロール血症の治療法と目標

家族性高コレステロール血症と診断された方は、これからの治療に大きな不安を感じているかもしれません。 しかし、適切な治療を早期から生涯にわたり継続することで、将来のリスクを大幅に下げることが可能です。

この病気の治療目的は、高すぎるLDL(悪玉)コレステロール値を厳格に管理し、動脈硬化の進行を食い止めることです。 生まれつきコレステロールが高い状態が続くため、血管がダメージを受ける期間が非常に長くなります。 そのため、一般的な脂質異常症よりも早期から、より確実な治療が必要となるのです。

治療は主に「食事・運動療法」「薬物療法」を柱として、患者さん一人ひとりの状態に合わせて総合的に行います。


コレステロールを減らす食事療法と効果的な運動療法

食事療法と運動療法は、家族性高コレステロール血症のすべての治療の土台となります。 薬の効果を最大限に引き出し、他の動脈硬化リスク(高血圧や糖尿病など)を管理するためにも非常に重要です。

【食事療法の基本戦略】

食事の目標は、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を減らし、動脈硬化の進行を抑えることです。 以下のポイントを意識して、日々の食生活を見直してみましょう。

食事のポイント

具体的な食品例と理由

積極的に摂りたい食品

【青魚】 サバ、イワシ、アジなど


 ⇒ EPAやDHAが豊富で、中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする効果が期待できます。


【大豆製品】 豆腐、納豆、豆乳など


 ⇒ 良質なたんぱく質を含み、コレステロールの吸収を抑える働きがあります。


【食物繊維】 野菜、きのこ類、海藻類、玄米


 ⇒ コレステロールの排出を助け、血糖値の急上昇を抑えます。

摂取を控えたい食品

【飽和脂肪酸】 肉の脂身、バター、ラード、生クリーム、加工肉


 ⇒ 体内でLDLコレステロールを増やす主な原因となります。


【コレステロール】 鶏卵の黄身、レバー、魚卵(いくら、たらこ)


 ⇒ 飽和脂肪酸ほどではありませんが、摂りすぎは避けましょう。


【トランス脂肪酸】 マーガリン、ショートニング、洋菓子、スナック菓子


 ⇒ LDLコレステロールを増やし、HDL(善玉)コレステロールを減らすため、特に注意が必要です。

【運動療法のポイント】

適度な運動は、脂質代謝を改善し、心肺機能を高める効果があります。 無理なく、楽しみながら続けることが成功の鍵です。


  • 推奨される運動

    ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動が中心です。


  • 運動の目標

    「ややきつい」と感じる中等度の強度で、1回30分以上、週に合計150分以上を目指しましょう。


  • 重要な注意点

    すでに動脈硬化が進行している可能性もあります。運動を始める前には必ず主治医に相談し、安全な運動強度を確認してください。


スタチンを基本とした薬物療法の種類と効果、副作用

家族性高コレステロール血症は遺伝的な要因が極めて強いため、食事や運動だけでは目標値を達成できません。 そのため、診断されたら早期に薬物療法を開始することが、将来の心筋梗塞などを防ぐために不可欠です。

治療の主役となるのが「スタチン」という薬です。 これは肝臓でのコレステロール合成を強力に抑え、血液中のLDLコレステロールを大幅に低下させます。

しかし、スタチンだけでは効果が不十分な場合や、副作用で使えない場合も少なくありません。 その際は、作用の異なる薬を組み合わせる「併用療法」が基本となります。

薬の種類

主な作用と特徴

スタチン

【治療の基本】肝臓でのコレステロール合成を阻害します。LDLコレステロールを強力に下げる第一選択薬です。

エゼチミブ

【吸収をブロック】小腸でのコレステロール吸収を阻害します。スタチンとの併用で高い効果を発揮します。

PCSK9阻害薬

【強力な効果】肝臓がLDLコレステロールを取り込むのを助ける注射薬です。スタチンやエゼチミブで目標未達の場合に用います。

胆汁酸吸着レジン

【排出を促進】コレステロールから作られる胆汁酸を便として排出し、結果的に血液中のコレステロールを低下させます。

副作用との付き合い方

薬物療法では副作用が心配になるかもしれませんが、重篤なものはまれです。 スタチンで時に見られる副作用には、筋肉の痛みやだるさ、肝機能障害などがあります。

医師は定期的な血液検査で肝臓や筋肉の状態をチェックし、安全性を確認しながら治療を進めます。 もし気になる症状が現れても、自己判断で服薬を中止しないでください。 中止するとコレステロール値が元に戻り、動脈硬化が再び進行してしまいます。必ず主治医に相談しましょう。


重症例で行われるLDLアフェレシスという血液浄化療法

複数の強力な薬を最大限に使用しても、LDLコレステロールが目標値まで下がらない最重症の患者さんがいます。 特に、両親から原因遺伝子を受け継ぐ「ホモ接合体」という非常にまれなタイプの方が対象となります。

このようなケースでは、「LDLアフェレシス」という特殊な血液浄化療法が行われます。 これは血液透析に似た方法で、血液を体外に取り出し、LDLコレステロールだけを選択的に吸着・除去する専用フィルターに通します。 そして、浄化された血液を体内に戻す治療法です。


  • 治療の頻度と時間

    通常は1〜2週間に1回、1回の治療に2〜3時間程度かかります。


  • 治療の目的

    薬物療法と並行して行い、動脈硬化の進行を強力に食い止め、心血管疾患の発症を予防します。


当院でこの治療を行う事は出来ません。 内服薬でのコントロールが不良な場合にこの様な治療か出来る病院にご紹介する事があります。


治療によって目指すべきLDLコレステロールの管理目標値

家族性高コレステロール血症の治療では、生涯にわたる動脈硬化リスクを最小限にするため、一般的な脂質異常症より厳しい管理目標が設定されています。 この目標値を達成し、維持し続けることが何よりも重要です。

目標値は、すでに心筋梗塞や狭心症などの病気を発症しているか(二次予防)どうかで異なります。

対象となる患者さんの状態

LDLコレステロールの管理目標値

心筋梗塞などの既往がない場合(一次予防)

100 mg/dL 未満

心筋梗塞などの既往がある場合(二次予防)

70 mg/dL 未満

さらに、これらの絶対的な目標値に加えて、「治療前の値から50%以上低下させる」という相対的な目標も重視されます。 例えば、治療前のLDLコレステロール値が280mg/dLだった方は、まず半分の140mg/dL未満を目指し、さらに100mg/dL未満を目指すという段階的なアプローチをとります。

この厳格な目標を達成するためには、生活習慣の改善を土台としながら、スタチンを中心とした薬物療法を根気強く継続する必要があります。 定期的に血液検査を受け、ご自身の数値を把握し、医師と二人三脚で治療に取り組んでいきましょう。



専門医が行う生涯にわたる心血管リスク管理

家族性高コレステロール血症の治療目標は、単に数値を下げることではありません。 その先にある「将来の心筋梗塞や狭心症を防ぎ、健康な人生を長く送ること」が最も重要です。

この病気は生涯にわたる付き合いが必要なため、専門医と協力した包括的なリスク管理が不可欠です。 自覚症状がないからこそ、油断せずに治療を続け、定期的にご自身の体の状態を確認していきましょう。


定期的な心臓精密検査(心エコー・冠動脈CT)の必要性

家族性高コレステロール血症の方は、若い頃から自覚症状がないまま動脈硬化が進むという特徴があります。 研究により、動脈硬化は小児期に始まり、リスクにさらされることで進行することがわかっています。

薬でLDLコレステロール値が目標まで下がっていても、血管の状態は別問題です。 そのため、定期的な精密検査、いわば「血管の健康診断」で動脈硬化の進行度を客観的に評価することが不可欠です。 これにより、治療が順調に進んでいるかを確認し、より効果的な治療方針を立てることができます。

主な精密検査

この検査で何がわかるか?

心エコー(心臓超音波検査)

心臓のポンプ機能や弁の状態、心臓の壁の厚さを評価します。長年の高コレステロール血症による心臓への負担を確認できます。

頸動脈エコー

首の血管(頸動脈)の壁の厚さやプラーク(血管のコブ)を調べます。全身の動脈硬化の進行度を知るための重要な指標となります。

冠動脈CT検査

心臓を養う血管(冠動脈)を直接撮影します。血管の狭窄(狭くなること)や石灰化の有無を評価し、心筋梗塞のリスクを直接的に把握します。

運動負荷心電図検査

運動で心臓に負荷をかけ、心電図の変化を調べます。隠れた冠動脈の血流不足(虚血)がないかを確認する検査です。

これらの検査をいつ、どのくらいの頻度で行うかは、年齢やコレステロール値、他の病気の有無で異なります。

当院ではまず、心エコー、頸動脈エコーを行い、結果により以降の精密検査が出来る医療機関にご紹介する事があります。


コレステロール以外のリスク因子(血圧・血糖・喫煙)の同時管理

心筋梗塞のリスクを高めるのは、LDLコレステロールだけではありません。 動脈硬化は、複数の危険因子が重なると、足し算ではなく「掛け算」で加速度的に進行します。 そのため、LDLコレステロールの管理と同時に、他のリスク因子も厳格に管理することが極めて重要です。


【動脈硬化を加速させる主なリスク因子】


  • 高血圧

    常に血管の壁に高い圧力がかかり、血管を傷つけ、動脈硬化を進めます。


  • 糖尿病(高血糖)

    過剰な糖が血管の内側を傷つけ、動脈硬化を促進します。


  • 喫煙

    血管を収縮させ、血液を固まりやすくし、血管壁を直接傷つけます。まさに「百害あって一利なし」です。


  • 肥満(特に内臓脂肪型)

    高血圧、糖尿病、脂質異常症を引き起こしやすく、動脈硬化の温床となります。


  • 慢性腎臓病(CKD)

    腎機能が低下すると、動脈硬化が進行しやすくなることが知られています。


これらのリスク因子を複数お持ちの場合は、一つひとつに適切な対策が必要です。 コレステロール管理と併せて、食事療法、運動療法、そして必要に応じて薬物療法を行い、総合的な管理を目指しましょう。


将来の心血管イベントを防ぐための包括的アプローチ

家族性高コレステロール血症の治療は、長期的な視点に立った包括的なアプローチが鍵を握ります。 ある研究では、非常に重要な事実が示されています。

それは、「若いうちから適切な治療を受けたFH患者さんは、治療開始が遅れた親世代よりも、心血管疾患を発症しないまま健康に過ごせる期間が大幅に長くなる」というものです。

これは、成人になって心筋梗塞などを起こしてから介入する従来の戦略では、手遅れになりかねないことを示唆しています。 将来の重大な病気を防ぐためには、以下の要素を組み合わせた管理が不可欠です。


【健康な未来を守るための5つの柱】


  1. 早期からの厳格なLDLコレステロール管理

    診断後すぐに薬物療法と生活習慣の改善を開始し、厳しい管理目標を達成・維持します。


  2. 定期的な動脈硬化の評価

    心エコーや冠動脈CTなどで定期的に血管の状態をチェックし、治療方針を微調整します。


  3. コレステロール以外のリスク因子の管理

    高血圧、糖尿病、禁煙など、動脈硬化を進める他の要因も同時にコントロールします。


  4. ご家族への働きかけ(カスケードスクリーニング)

    血縁者にも同じ病気の可能性があるため検査を勧め、家族全体の健康を守ります。


  5. 専門医との継続的な連携

    生涯にわたる治療だからこそ、信頼できる主治医と二人三脚で治療を続けることが大切です。


この包括的なアプローチこそが、あなたの未来の健康を守るための最も確実な道筋となります。


治療効果を最大限に高める薬剤の最適な組み合わせ

家族性高コレステロール血症は、遺伝が原因のため、食事や運動だけでは目標達成が困難です。 そのため、強力な薬物療法が治療の基本となり、多くは複数の薬を組み合わせる「併用療法」を行います。

患者さん一人ひとりの状態を見ながら、最適な薬の組み合わせを調整していきます。 治療の主役はスタチンですが、それだけでは効果が不十分な場合も少なくありません。

主な薬剤の種類

作用の仕組みと特徴

スタチン

【治療の土台】肝臓でのコレステロール合成を強力に抑えます。FH治療の第一選択薬であり、最も重要な薬です。

エゼチミブ

【吸収をブロック】小腸で食事由来のコレステロールが吸収されるのを防ぎます。スタチンの効果を高める「最高の相棒」です。

PCSK9阻害薬

【強力な援軍】肝臓がLDLコレステロールを取り込むのを助ける注射薬です。スタチンやエゼチミブで目標未達の場合に用いる非常に強力な薬です。

胆汁酸吸着レジン

【排出を促進】コレステロールから作られる胆汁酸を便として排出し、結果的に血液中のコレステロールを減らします。

まずスタチンを基本とし、効果が不十分ならエゼチミブを追加します。 それでも目標値に届かない重症例では、PCSK9阻害薬の注射を追加するなど、段階的に治療を強化します。

自己判断で薬をやめたり量を減らしたりすると、コレステロール値は元に戻り、動脈硬化が進行します。 気になることがあれば必ず主治医に相談し、納得して治療を継続することが何よりも大切です。



家族性高コレステロール血症Q&A

家族性高コレステロール血症と診断され、治療や生活について多くの疑問や不安をお持ちのことと思います。 ここでは、患者さんから特によくいただく質問に、専門医の視点から詳しくお答えします。


Q1. 薬は一生飲み続けないといけないのでしょうか?

A1. はい、生涯にわたる服薬が基本となります。 この病気は遺伝的な体質が原因で、薬をやめるとコレステロール値は元の高い状態に戻ってしまいます。 すると、再び動脈硬化が急速に進行し、心筋梗塞などのリスクが高まります。

治療の目的は、血中のLDL(悪玉)コレステロール値を厳格に管理し、動脈硬化の進行を食い止めることです。 治療を粘り強く続けることで、心臓や血管の病気を発症するリスクを大幅に下げ、健康な方と変わらない生活を送ることが期待できます。 自己判断で中断せず、主治医と一緒に治療を継続していきましょう。


Q2. 子どもに遺伝する可能性はありますか?

A2. はい、お子さんには50%の確率で遺伝する可能性があります。 この病気は「常染色体優性遺伝」という形式をとり、片方の親から原因となる遺伝子を受け継ぐだけで発症するためです。 ご自身が診断された場合、ご両親、ご兄弟、お子さんにも同じ体質の方がいる可能性が高いと言えます。

そのため、血縁者の方々にも検査を受けていただく「カスケードスクリーニング」が非常に重要になります。 これにより、まだ症状が出ていないご家族を早期に発見し、手遅れになる前に治療を開始できます。 お子さんの将来の健康を守るためにも、ぜひご家族で検査について話し合ってみてください。


Q3. 食事ではどのようなことに気をつければよいですか?

A3. 薬物療法が治療の中心ですが、食事療法はその効果を最大限に引き出すための土台となります。 基本は、コレステロールや動脈硬化を進める脂肪酸を減らし、排出を助ける成分を積極的に摂ることです。

食事のポイント

具体的な食品例と理由

控えるべき食品

【飽和脂肪酸】 肉の脂身、バター、ラード、生クリーム


 ⇒ 体内でLDLコレステロールを増やす最大の原因です。


【トランス脂肪酸】 マーガリン、洋菓子、スナック菓子


 ⇒ LDLを増やしHDL(善玉)を減らすため特に注意が必要です。


【コレステロール】 鶏卵の黄身、レバー、魚卵


 ⇒ 摂りすぎは避けましょう。

積極的に摂りたい食品

【青魚】 サバ、イワシ、アジ


 ⇒ EPAやDHAが豊富で、血液をサラサラにします。


【大豆製品】 豆腐、納豆、豆乳


 ⇒ 良質なたんぱく質で、コレステロールの吸収を抑えます。


【食物繊維】 野菜、きのこ、海藻、玄米


 ⇒ コレステロールの体外への排出を助けます。

Q4. 生命保険への加入は難しいのでしょうか?

A4. 加入の可否は、病状や治療による管理状況によって異なります。 まずは通常の生命保険を検討し、難しい場合でも、持病がある方向けの「引受基準緩和型」といった選択肢があります。

重要なのは、加入を申し込む際に、現在の健康状態や治療歴を保険会社へ正確に告知することです。 治療によってコレステロール値が安定していることは、良い判断材料になる可能性があります。 診断書や健康診断の結果などが必要になる場合が多いので、まずは保険会社の担当者にご相談ください。


Q5. 新しい治療法にはどのようなものがありますか?

A5. はい、治療法は近年大きく進歩しており、選択肢が増えています。 スタチンなどの飲み薬で目標値に届かない場合、強力な選択肢が複数あります。

新しい治療法の種類

特徴と対象となる患者さん

PCSK9阻害薬

2〜4週間に1回の自己注射薬です。肝臓がLDLコレステロールを取り込むのを強力に助け、スタチンと併用することで高い効果を発揮します。

ANGPTL3阻害薬

特に重症の「ホモ接合体」の患者さん(両親から原因遺伝子を受け継いだタイプ)に使われる点滴薬です。従来の薬が作用する「LDL受容体」という仕組みに頼らず、コレステロールを低下させる画期的な治療法です。

特にANGPTL3阻害薬(エビナクマブなど)の登場は、これまで治療が極めて難しかった最重症の患者さんの診療を変えつつあります。 治療法は日々進歩していますので、現在の治療で悩んでいる場合でも、諦めずに主治医とよく相談することが大切です。



まとめ

今回は、遺伝が原因で起こる家族性高コレステロール血症について、その特徴から治療法まで詳しくご紹介しました。

この病気は食生活や運動不足のせいではなく、生まれつきLDL(悪玉)コレステロールが高くなることで、若い頃から気づかないうちに動脈硬化が進行してしまうのが大きな特徴です。

しかし、最も大切なのは、早期に正しい診断を受け、お薬を中心とした適切な治療を生涯にわたって続けることで、心筋梗塞などの将来のリスクを大幅に減らせるということです。

健康診断でコレステロールの異常を指摘された方、アキレス腱の肥厚や家族の病歴が気になる方は、ご自身の未来の健康を守るために、決して放置せず、まずは循環器内科などの専門医へ相談してみてください。


参考文献

  • 成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022

  • Khoury M, Ware AL, McCrindle BW. The prevention of adult cardiovascular disease must begin in childhood: evidence and imperative. Nature reviews. Cardiology, no. (2025).

  • and Karr S. Epidemiology and management of hyperlipidemia. The American journal of managed care 23, no. 9 Suppl (2017): S139-S148.

  • Tomlinson B, Chan P. Exploring emerging pharmacotherapies for type 2 diabetes patients with hypertriglyceridemia. Expert opinion on pharmacotherapy 26, no. 3 (2025): 279-289.

  • Marston NA, Zimerman A. Future of angiopoietin-like protein 3 inhibitors as a therapeutic agent. Current opinion in lipidology 36, no. 6 (2025): 285-291.


 
 
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