糖尿病の薬 マンジャロとは?
- HEIWA SOTOMURA

- 1月23日
- 読了時間: 22分
更新日:1月26日
「忙しい人向け|1分要約スライド」
「血糖値も気になるけれど、食事制限や運動だけでは体重がなかなか落ちない…」そんな悩みを抱える2型糖尿病の方に、治療の常識を覆す可能性を秘めた新しい選択肢が登場しました。その名は「マンジャロ」。
世界で初めて2つのホルモンに働きかけるこの薬は、優れた血糖コントロール効果はもちろん、臨床試験では約1年半で平均-20.9%もの体重減少を達成したという驚きのデータが報告されています。これは平均体重105kgの方なら、約22kgもの減量に相当します。
なぜマンジャロはこれほどの効果が期待できるのでしょうか。この記事では、大きな注目を集めるマンジャロの画期的な作用の仕組みから、従来の薬との違い、具体的な効果まで、その全貌を徹底解説します。
マンジャロとは?作用機序や類似薬との違いを解説
糖尿病の新しい治療薬「マンジャロ」が、多くの注目を集めています。 マンジャロは、2型糖尿病の治療を目的として開発された週1回投与の自己注射薬です。
従来の薬とは異なる仕組みで血糖値を安定させる効果が期待できます。 さらに、体重を減少させる効果も報告されており、関心を持つ方が増えています。
この記事では、マンジャロがどのような薬なのかを詳しく解説します。 その作用の仕組みや、他の類似薬との違いを分かりやすくお伝えします。
マンジャロの作用機序
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)の最大の特徴は、世界で初めて2つのホルモンに同時に作用する点にあります。 そのホルモンとは、「GIP」と「GLP-1」です。
これらは「インクレチン」と呼ばれ、食事で炭水化物や脂質などを摂ると小腸から分泌されます。 インクレチンは、体内の血糖値をコントロールする司令塔のような働きをしています。
マンジャロは、このGIPとGLP-1の両方が結合する「受容体」という部分に作用します。 鍵と鍵穴の関係のように、2つの鍵穴に働きかけることで、強力な効果を発揮するのです。
具体的には、以下のような働きがあります。
血糖コントロール作用
血糖値が高い時に、すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促します。
血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を抑えます。
血糖値に応じて働くため、単独使用では低血糖のリスクが低いのが特徴です。
体重減少をサポートする作用
脳にある食欲に関連する部分に働きかけ、食欲を自然に抑えます。
胃の動きを緩やかにすることで、食べ物が胃に留まる時間が長くなります。
これにより、少ない食事量でも満腹感が得られ、持続しやすくなります。
このようにマンジャロは、血糖値の安定化と食欲のコントロールという、2つの側面から効果を発揮します。 代謝だけでなく、食欲や摂食行動といった心理的な面にも影響を与える新しいタイプの薬剤です。
他のGLP-1薬との徹底比較【マンジャロ vs オゼンピック vs リベルサス】
これまで糖尿病治療やダイエット目的で使われてきた薬に、オゼンピックやリベルサスがあります。 これらは「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれ、GLP-1というホルモンのみに作用します。
マンジャロとこれらの薬との最も大きな違いは、作用するホルモンの数です。 マンジャロはGIPとGLP-1の両方に働きかけるため、「デュアルアゴニスト(二重作動薬)」と呼ばれています。
それぞれの薬の特徴を下の表にまとめました。
薬剤名 | マンジャロ | オゼンピック | リベルサス |
一般名 | チルゼパチド | セマグルチド | セマグルチド |
作用するホルモン | GIP と GLP-1 | GLP-1のみ | GLP-1のみ |
分類 | GIP/GLP-1受容体作動薬 | GLP-1受容体作動薬 | GLP-1受容体作動薬 |
投与方法 | 週1回 皮下注射 | 週1回 皮下注射 | 毎日1回 経口薬 |
特徴 | GIPが加わることによる 強力な血糖改善・体重減少効果 | GLP-1の作用に特化 した注射薬 | 注射が不要な初の 経口GLP-1薬 |
表からも分かるように、マンジャロは作用するホルモンが1つ多い点が大きな特徴です。 この作用点の違いにより、従来のGLP-1受容体作動薬よりも高い血糖改善効果と体重減少効果が期待されています。
実際に、糖尿病ではない肥満症の方を対象とした臨床試験も行われています。 その試験では、オゼンピック(セマグルチド)と比較して、マンジャロの方がより強い体重減少効果を示したというデータも報告されています。
どの薬が最適かは患者さんの状態やライフスタイルによって異なります。 しかし、より高い効果を求める場合、マンジャロは非常に有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
マンジャロのダイエット効果と糖尿病治療への影響
「血糖値も気になるけれど、体重もなかなか落ちない」という悩みは、多くの糖尿病患者さんが抱えています。 マンジャロは、血糖値を良好にコントロールするだけでなく、体重を減らす効果も期待できる新しいお薬です。
肥満は、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病の引き金になります。 さらに、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気のリスクを高めることも分かっています。
マンジャロは、血糖コントロールを改善しながら体重を減らすことで、これらの病気のリスクを総合的に管理できる可能性がある治療薬です。
具体的な体重減少データ【〇ヶ月で何キロ痩せる?】
マンジャロの体重減少効果は、複数の臨床試験で科学的に検証されています。 どのくらいの期間で、どの程度の体重減少が期待できるのか、具体的なデータを見ていきましょう。
2型糖尿病の患者さんを対象としたデータ
2型糖尿病の患者さん(平均体重約94kg)を対象にした臨床試験(SURPASS試験)では、40週間(約10ヶ月)の使用で、用量に応じた体重減少が認められました。
薬剤の種類 | 40週後の平均体重減少量 |
マンジャロ 5mg | -7.8kg |
マンジャロ 10mg | -10.3kg |
マンジャロ 15mg | -12.4kg |
比較薬(オゼンピック1mg) | -6.2kg |
この結果から、既存のGLP-1受容体作動薬と比較しても、マンジャロはより高い体重減少効果を持つことが示唆されています。
肥満症の患者さん(糖尿病ではない方)を対象としたデータ
糖尿病ではない肥満症の患者さん(平均体重約105kg)を対象とした臨床試験(SURMOUNT-1試験)では、さらに大きな効果が確認されています。 72週間(約1年半)の使用で、以下のような結果が得られました。
治療法 | 72週後の平均体重減少率(減少量) |
マンジャロ 15mg | -20.9%(約-22kg) |
食事・運動療法のみ | -3.1%(約-3kg) |
また、複数の研究データを統合したメタアナリシスという手法の報告では、糖尿病ではない肥満症の方が、体重減少効果がより顕著に見られる傾向が示されています。 特にマンジャロ15mgを投与された人のうち、約半数(51.8%)が15%以上の体重減少を達成したというデータもあります。
血糖値・HbA1cの改善データ【臨床試験の結果から解説】
マンジャロは体重減少だけでなく、糖尿病治療の根幹である血糖コントロールにおいても優れた効果を発揮します。 治療効果の重要な指標となるのが「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」です。
HbA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均を反映する数値です。 この値が低いほど、血糖コントロールが良好な状態であることを意味します。
2型糖尿病の患者さんを対象とした臨床試験では、HbA1cの大幅な改善が見られました。
薬剤の種類 | 40週後のHbA1cの平均低下量 |
マンジャロ 5mg | -2.01% |
マンジャロ 10mg | -2.24% |
マンジャロ 15mg | -2.30% |
比較薬(オゼンピック1mg) | -1.86% |
さらに、マンジャロは血糖値だけでなく、心臓や血管の病気のリスクを高める「心血管代謝リスク因子」にも良い影響を与えることが報告されています。
血圧の低下
脂質プロファイルの改善
悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪の低下
ウエスト周囲径の減少
これらの多面的な効果により、マンジャロは単に血糖値を下げるだけではありません。 将来の心筋梗塞や脳卒中といった、重篤な合併症の予防にもつながることが期待されています。
食欲が抑えられるメカニズム【GIPとGLP-1の働き】
「マンジャロを使うと、なぜ自然と食欲が抑えられるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。 その秘密は、私たちの体にもともと存在する2つのホルモン、「GIP」と「GLP-1」にあります。
これらは食事を摂ると小腸から分泌されるホルモンで、まとめて「インクレチン」と呼ばれます。 インクレチンは血糖値のコントロールや食欲の調整に重要な役割を果たしています。
ホルモン | 主な働き |
GLP-1 | ・脳の満腹中枢に作用し、満腹感を持続させる ・胃の動きを緩やかにし、空腹を感じにくくする |
GIP | ・血糖値に応じてインスリン分泌を促す ・脂肪の分解を助け、エネルギー消費を促す可能性も示唆 |
マンジャロは、このGIPとGLP-1の両方に同時に作用する世界初の「デュアル作動薬」です。 1つの薬で2つのホルモンの働きを補うことで、食欲抑制と血糖改善の両方に対して、より強力な効果が期待できるのです。
具体的には、以下の2つのステップで食欲を抑え、体重減少をサポートします。
脳への作用
満腹を感じやすくなり、食べる量が自然と減ります。
胃への作用
食後の満腹感が長続きするため、間食や食べ過ぎを防ぎます。
この作用により、「つらい空腹を我慢する」のではなく、「無理なく食事量をコントロールできる」状態を目指せます。
効果はいつから実感できるのか【治療開始からの期間】
マンジャロによる治療効果の現れ方には個人差がありますが、一般的には以下のような経過をたどることが多いです。
治療初期(開始後2~4週間)
多くの方が、この時期から食欲が以前より抑えられている感覚を実感し始めます。
少ない食事量で満腹感を得られるなど、体重減少につながる変化を感じやすい時期です。
吐き気などの副作用が出やすい時期でもありますが、徐々に体が慣れていくことがほとんどです。
治療中期(開始後6~9ヶ月)
臨床試験では、この時期に体重減少の効果がピークに達する傾向が見られます。
週に1回の注射を継続することで、体重が着実に減少していきます。
焦らず、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
治療後期(9ヶ月以降)
体重減少が安定し、その体重を維持していく期間に入ります。
マンジャロの使用を中止すると体重がリバウンドする可能性があるため、減量した体重を維持するためにも、治療の継続が重要になる場合があります。
効果を最大限に引き出し、安全に治療を続けるためには、自己判断で量を変更したり中断したりしないでください。 必ず定期的に医師の診察を受け、相談しながら治療を進めていきましょう。
マンジャロの副作用と安全性に関する全知識
新しい薬を使い始める際、その効果と同じくらい副作用が気になるのは当然のことです。 マンジャロは多くの方に有効な治療薬ですが、他の薬と同様に副作用が起こる可能性があります。
しかし、どのような副作用があり、どう対処すれば良いかを事前に知っておくことが大切です。 そうすることで、過度な不安を和らげ、安心して治療に臨むことができます。 ここでは、マンジャロの副作用と安全性について、現場の医師の視点から一つひとつ丁寧に解説します。
よくある消化器症状(吐き気・便秘・下痢)の頻度と対処法
マンジャロの副作用で最も報告が多いのは、吐き気や便秘、下痢といった消化器系の症状です。 これは、マンジャロが持つ「胃の動きを緩やかにする」という作用が関係しています。
この作用によって満腹感が持続しやすくなるというメリットがある一方で、副作用として現れることがあります。 特に、治療を始めたばかりの時期や、薬の量を増やした時に症状が出やすい傾向があります。
しかし、これらの症状の多くは、体が薬に慣れるにつれて自然に軽くなっていきます。 症状が気になる場合は、日常生活の工夫で和らげることができますので、以下の表を参考にしてください。
症状 | 対処法のポイント |
吐き気・胃もたれ | ・一度にたくさん食べず、食事を少量ずつ何回かに分けて摂る ・脂っこい食事や揚げ物は、胃に負担をかけるため避ける ・おかゆやうどんなど、消化の良い食事を心がける |
便秘 | ・脱水を防ぎ、便を柔らかくするため、水分を十分に摂る ・食物繊維が豊富な野菜、きのこ、海藻類を食事に取り入れる ・ウォーキングなどの適度な運動を習慣にし、腸の動きを促す |
下痢 | ・胃腸に優しい消化の良い食事(おかゆ、うどんなど)を摂る ・香辛料や冷たいものなど、刺激となる食品は避ける ・脱水を防ぐため、経口補水液などで水分と電解質を補給する |
これらの対処法を試しても症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出るほど辛い時は、我慢しないでください。 自己判断で薬を中断するのではなく、必ず主治医や薬剤師に相談しましょう。
重篤な副作用(低血糖・膵炎・甲状腺腫瘍)のリスクと初期症状
頻度は非常に稀ですが、マンジャロの使用中に注意すべき重篤な副作用も報告されています。 これらの副作用は、初期症状に早く気づき、適切に対応することが何よりも重要です。
低血糖 マンジャロは血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促すため、単独使用での低血糖リスクは低い薬です。 しかし、他の糖尿病薬(特にインスリン製剤やSU薬)と併用すると、低血糖のリスクが高まります。
急性膵炎 膵臓に急性の炎症が起こる病気です。 これまでに経験したことのないような持続する激しい腹痛、背中の痛み、嘔吐などが特徴です。 このような症状が現れた場合は、すぐにマンジャロの使用を中止し、医療機関を受診してください。
甲状腺腫瘍 過去の動物実験で甲状腺の腫瘍が報告されたため、注意が必要とされています。 しかし、複数の研究データを統合した最近の報告では、マンジャロと同様の作用を持つ薬剤が、人の甲状腺がんのリスクにほとんど影響を与えない可能性が高いことが示唆されています。
注意すべき副作用 | 主な初期症状 | このような場合はすぐに受診を |
低血糖 | 冷や汗、動悸、手足の震え、強い空腹感、あくび | 意識がもうろうとする、けいれんが起こる |
急性膵炎 | 持続する激しい腹痛、背中の痛み、嘔吐 | 症状が急激に悪化し、我慢できないほどの痛み |
甲状腺腫瘍 | 首のしこりや腫れ、飲み込みにくさ、持続する声のかすれ | しこりが急に大きくなる、呼吸が苦しい |
もし低血糖の症状を感じた場合は、すぐにブドウ糖や糖分を含むジュースを摂取してください。 その他の症状に気づいた場合は、ためらわずに速やかに医師に連絡しましょう。
自己注射の正しい使い方【痛み・打ち忘れ・廃棄方法も解説】
マンジャロは、週に1回、ご自身で皮下に注射するお薬です。 針が一体となった「オートインジェクター」という使い切りタイプで、操作は非常に簡単です。
【基本的な注射の手順】
準備 石鹸でよく手を洗い、注射器とアルコール綿を用意します。
部位の選択と消毒 注射する場所(お腹、太もも、腕の裏側など)を決め、アルコール綿で消毒します。 毎回少しずつ場所をずらすことが、皮膚トラブルを防ぐポイントです。
注射 注射器のキャップを外し、皮膚に垂直にしっかりと当てます。 緑色の注入ボタンを押し、カチッという音が2回聞こえるまで約10秒間そのまま待ちます。
確認と廃棄 皮膚から離し、灰色のピストンが見えていれば注入完了です。 使用後の注射器は、針が内部に自動で収納される安全な設計になっています。
【痛み・打ち忘れ・廃棄方法】
痛みについて 針は非常に細く設計されており、多くの方はほとんど痛みを感じません。 もし痛みが気になる場合は、注射する部位を保冷剤などで冷やしてから打つと和らぐことがあります。
打ち忘れた場合 次の投与予定日まで3日(72時間)以上ある場合は、気づいた時点ですぐに注射してください。 3日未満の場合は、忘れた分は飛ばし、次回の決まった曜日に通常通り注射します。
廃棄方法 使用済みの注射器は、医療廃棄物です。 絶対に家庭ごみとして捨てず、処方された医療機関や薬局の指示に従い、専用の容器で返却してください。
長期間使用した場合の体への影響と注意点
マンジャロは比較的新しい薬ですが、長期使用の安全性についても研究が進められています。 現時点での臨床試験データでは、長期使用において特に懸念される点は報告されていません。
注意点として、自己判断でマンジャロの使用を中止すると、体重が元に戻る可能性があります。 マンジャロは、あくまで食事療法や運動療法をサポートする薬です。 治療中に身につけた健康的な生活習慣を続けることが、治療後の体重維持には最も重要です。
がんのリスクに関しては、大規模な研究データの解析が進んでいます。 現時点では、マンジャロと同様の作用を持つ薬剤が、肥満に関連するがんのリスクにほとんど影響を与えない可能性が示されています。 ただし、これは比較的短期的なデータに基づくものであり、長期的な影響については今後も情報収集が必要です。
どのような薬でも、効果と副作用の両面を正しく理解することが大切です。 治療中は必ず医師の指示を守り、定期的に診察を受けてください。 体調の変化や気になることがあれば、どんな些細なことでも医師に相談しましょう。
マンジャロ治療の流れとかかる費用(保険診療の場合)
新しい治療を始める際、特にご自身で注射を行うとなると、不安はつきものです。 「どのような手順で治療が進むのか」「費用は一体いくらかかるのだろうか」 このような疑問を持つのは、ごく自然なことです。
この記事では、2型糖尿病の治療としてマンジャロを保険診療で開始する場合の、具体的な流れや費用について解説します。 治療の全体像を事前に把握することで、安心して第一歩を踏み出しましょう。
保険適用で処方されるための具体的な条件
マンジャロの治療を健康保険を使って受けるには、満たすべき条件があります。 最も大切な点は、この薬が「2型糖尿病」の治療薬として国に承認されていることです。
【保険適用となるための主な条件】
医師の診察により「2型糖尿病」と明確に診断されていること
食事療法や運動療法を基本としてすでに取り組んでいるが、血糖コントロールが目標に届いていないこと
つまり、美容や減量のみを目的とした使用は、保険適用の対象外となります。 あくまで2型糖尿病の患者さんが、血糖値を良好に管理するために用いる場合に限られます。 当院では保険適応外(美容目的)での使用は行っておりませんのでご注意ください。
項目 | 保険適用(2型糖尿病治療) | 保険適用外(自由診療) |
目的 | 血糖コントロールの改善 | 減量・ダイエット |
対象 | 2型糖尿病の診断がある方 | 2型糖尿病の診断がない方 |
費用 | 医療費の1割~3割を自己負担 | 費用は全額自己負担 |
肥満を合併している2型糖尿病の患者さんにとって、血糖値の改善と体重減少の両方が期待できるマンジャロは、非常に有効な選択肢の一つです。 ご自身が保険適用の対象となるか、まずはかかりつけの医師に相談してみましょう。
マンジャロ導入までに調べるべき検査項目
マンジャロを安全に、そして効果的に使用するため、治療開始前にはいくつかの検査を行います。 これらの検査は、現在の体の状態を正確に把握するために不可欠です。 マンジャロがあなたにとって最適な治療法か、また副作用のリスクは高くないかなどを総合的に判断します。
【治療開始前に行う主な検査と目的】
検査項目 | 検査の目的 |
問診 | ・過去の病気(特に膵炎、胆石症、甲状腺の病気など)の確認 ・ご家族の病歴(特に甲状腺髄様癌など)の確認 ・現在使用中の他の薬やサプリメントの確認 |
身体診察 | ・身長、体重、BMI、腹囲、血圧を測定し、基本的な体の状態を把握 |
血液検査 | ・血糖値・HbA1c: 糖尿病の現在の状態を正確に評価します ・肝機能(AST, ALT): 2型糖尿病の方は、脂肪肝の一種であるMASH(マッシュ)を合併することがあります。マンジャロは体重減少を通じてMASHを改善する効果も報告されており、治療前後の評価が大切です ・腎機能(eGFR): 薬の成分を体外へ排泄する腎臓の働きを確認します ・膵酵素(アミラーゼ): まれな副作用である急性膵炎のリスクを評価します |
尿検査 | ・尿中の糖やタンパク質の有無を調べ、腎臓への影響などを確認します |
これらの検査結果をもとに、医師がマンジャロによる治療が適切かどうかを最終的に判断します。
マンジャロ導入から維持量に至るまでの流れ
マンジャロは、副作用のリスクを最小限に抑えながら、効果を最大限に引き出す工夫がされています。 そのために、最も少ない量から始め、体を薬に慣らしながら、段階的に投与量を増やしていきます。
一般的な治療の流れは、以下の3つのステップで進みます。
導入期(最初の4週間)
開始用量:週1回 2.5mg
まずは最も少ない2.5mgからスタートします。この期間の目的は、主に吐き気などの消化器症状が出ないかを確認し、体が薬に慣れるのを待つことです。
増量期(4週間ごと)
導入期に大きな問題がなければ、4週間ごとに2.5mgずつ投与量を増やしていきます。
用量ステップ: 2.5mg → 5.0mg → 7.5mg → 10.0mg → 12.5mg → 15.0mg
血糖値の改善効果や体重の変化、副作用の有無などを慎重に見ながら、医師が患者さん一人ひとりに合った増量のペースを決定します。
維持期
血糖値が目標範囲で安定し、副作用も問題ない量に達したら、その量を「維持量」として治療を継続していきます。
必ずしも最大量の15mgまで増やすわけではありません。5mgや7.5mgがその方にとって最適な維持量となることも多くあります。
治療開始後も、効果や副作用を確認するために定期的な通院が必要です。 自己判断で量を変更したり中断したりせず、医師と相談しながら治療を進めましょう。
薬価と月々の自己負担額シミュレーション
保険診療でマンジャロを使用する場合、薬剤費の自己負担はかかった医療費の1割〜3割です。 ここでは、マンジャロの薬剤費が月々どのくらいになるのかをシミュレーションしてみましょう。
※以下の金額は薬剤費のみの目安です。実際には、診察料や検査料、処方箋料などが別途かかります。
【マンジャロの薬価(1本あたり)】
投与量 | 薬価(2024年4月時点) |
2.5mg | 1,928円 |
5.0mg | 3,856円 |
7.5mg | 5,784円 |
10.0mg | 7,712円 |
12.5mg | 9,640円 |
15.0mg | 11,568円 |
【月々の薬剤費シミュレーション(週1回、月に4本使用した場合)】
投与量 | 3割負担の場合 | 1割負担の場合 |
5.0mg | 約4,630円 | 約1,540円 |
10.0mg | 約9,250円 | 約3,080円 |
15.0mg | 約13,880円 | 約4,630円 |
もし医療費の自己負担額が高額になった場合は、「高額療養費制度」が利用できます。 この制度は、所得に応じて定められた上限額を超えた分が、後から払い戻される仕組みです。
また、ご自身や生計を同じくする家族の年間の医療費が一定額を超えた場合は、「医療費控除」の対象となり、税金の還付を受けられることもあります。 詳しくは、ご加入の健康保険組合や市町村の窓口、またはクリニックでご相談ください。
マンジャロQ&A
マンジャロによる治療を検討する際、多くの患者さんが抱かれる疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。
Q1. 注射は痛いですか?自分でできますか?
A. マンジャロの注射針は髪の毛のように非常に細く、痛みを感じにくいように工夫されています。多くの方が「思ったより痛くなかった」「チクッとする程度」とおっしゃいます。
注射器は「オートインジェクター」と呼ばれるペン型で、操作はとても簡単です。
キャップを外す
皮膚にしっかり当てる
ボタンを押す
この3ステップだけで、針の取り付けや難しい操作は一切不要です。自動で注射が完了するため、ほとんどの方が初回からご自身で問題なく注射できています。
Q2. 他のGLP-1薬(オゼンピックなど)とどう違いますか?
A. マンジャロとオゼンピックなどの従来薬との最も大きな違いは、作用するホルモンの数にあります。
薬剤の種類 | 作用するホルモン | 特徴 |
マンジャロ | GIP と GLP-1 | 2種類のホルモンに働きかけ、より強力な血糖改善・体重減少効果が期待できる |
オゼンピックなど | GLP-1のみ | 1種類のホルモンに働きかける |
マンジャロは「GIP」と「GLP-1」という2つのホルモンに同時に作用する、世界初の「デュアル作動薬」です。複数の研究を統合した報告では、特に糖尿病ではない肥満症の方において、より顕著な体重減少効果が示されています。
Q3. 脂肪肝にも効果はありますか?
A. はい、脂肪肝の改善効果も期待できます。マンジャロは、直接的に脂肪肝を治療する薬ではありません。しかし、体重減少を通じて肝臓に蓄積した脂肪を減らす効果が見込めます。
複数の臨床試験をまとめた信頼性の高い研究でも、マンジャロは体重を大きく減少させるだけでなく、以下のような代謝に関する数値を改善することが報告されています。
悪玉コレステロールや中性脂肪の低下
血糖値や血圧の改善
これらの総合的な効果により、特に2型糖尿病の患者さんが合併しやすい脂肪肝の状態にも、良い影響を与えると考えられています。
Q4. 長期間使っても安全ですか?がんのリスクはありますか?
A. ご心配になる点かと思います。現時点では、マンジャロを含むGLP-1関連薬が、特定のがんのリスクを高めるという明確な証拠は確認されていません。
9万人以上が参加した48件の研究を統合した最近の報告では、これらの薬剤が甲状腺がんや膵臓がんのリスクにほとんど影響を与えない可能性が高いことが示されました。
ただし、比較的新しい薬であるため、より長期間使用した場合の安全性については、引き続き世界中で情報が収集されています。ご不安な点は、必ず主治医にご相談ください。
Q5. やめたらリバウンドしますか?
A. マンジャロの使用を中止すると、抑えられていた食欲が元に戻り、体重がリバウンドする可能性があります。大切なのは、マンジャロを「生活習慣を根本から見直すための強力なサポーター」と捉えることです。
薬の効果で食欲がコントロールしやすい期間に、健康的な食生活や運動習慣を身につけることが、治療後の体重維持に繋がります。薬に頼るだけでなく、ご自身の食行動や心理的な側面を見直す良い機会と捉え、健康的な生活スタイルを確立していくことが最も重要です。
まとめ
今回は、新しい2型糖尿病治療薬「マンジャロ」について、その仕組みから効果、費用まで詳しく解説しました。
マンジャロの最大の特徴は、GIPとGLP-1という2つのホルモンに同時に作用する点にあります。これにより、従来の薬よりも優れた血糖コントロール効果と、自然な食欲抑制による高い体重減少効果が期待できます。
治療は医師の指導のもと、少量から慎重に進めます。副作用が心配な方もいるかもしれませんが、多くは体が薬に慣れることで軽快していきます。大切なのは、マンジャロを生活習慣を見直すための強力なサポーターと捉え、治療期間中に健康的な食生活などを身につけることです。
もしマンジャロによる治療に関心があったり、現在の治療で悩んでいたりするなら、まずは一人で抱え込まず、かかりつけの医師に相談してみましょう。あなたに合った治療法を見つけるための、大切な第一歩になります。
参考文献
Wang JY, Kang JW, Peng TR, Chen HY, Chen SM, Lee MC. "Exploring the Efficacy and Safety of Tirzepatide in Obesity Management and Cardiometabolic Risk Factors: A Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis." Clinical obesity 15, no. 6 (2025): e70036.
Cerchi E, Santo PADE, de Oliveira MC, Janovsky CCPS, Halpern B. "Effects of tirzepatide on weight management in patients with and without diabetes: a systematic review and meta-analysis." International journal of obesity (2005) 49, no. 12 (2025): 2415-2425.
GLP-1およびGIP受容体作動薬の体重減少における心理的および行動的影響:包括的レビュー
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬およびデュアルアゴニストと癌のリスク:システマティックレビューとメタアナリシス




































