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頸動脈超音波とは? 脂質異常症や高血圧の方に重要な検査

  • 執筆者の写真: HEIWA SOTOMURA
    HEIWA SOTOMURA
  • 1月22日
  • 読了時間: 22分

更新日:1月26日


「忙しい人向け|1分要約スライド」



健康診断で「脂質異常症」や「高血圧」を指摘されても、自覚症状がないからと後回しにしていませんか?その油断こそが、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気の引き金となる「動脈硬化」を、静かに進行させているサインかもしれません。実は、血管の壁の厚さがわずか1.0mmを超えるだけで、その危険な兆候は始まっているのです。

この記事では、そんな目に見えない血管の状態を痛みなく「見える化」する、頸動脈超音波検査を特集します。なぜ首の血管が全身の健康を映す「窓」になるのか、そして自覚症状のない段階でどのように将来のリスクを発見できるのか。あなたの未来を守るための「血管の健康診断」について、詳しく解説していきます。



頸動脈超音波検査で何がわかるのか

健康診断などで「動脈硬化」という言葉を耳にして、ご自身の血管の状態が気になっている方も多いのではないでしょうか。

頸動脈超音波(エコー)検査は、そんな目に見えない血管の状態を「見える化」する、いわば「血管の健康診断」です。

痛みや放射線被ばくの心配が全くなく、体に負担をかけずに安全に受けられます。 この検査では、脳へ血液を送る首の太い血管「頸動脈」を直接観察します。

そして、動脈硬化の進行具合を評価し、将来の脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気のリスクを予測します。

この検査で主にわかること

具体的な内容

全身の動脈硬化の進行度

頸動脈の状態から、心臓や足など全身の血管の健康状態を推測します。

脳梗塞などのリスク評価

血管の詰まりや、詰まりの原因となる「プラーク」という塊の有無を調べ、脳梗塞や心筋梗塞の危険度を評価します。

治療方針の決定・効果判定

検査結果をもとに、生活習慣の改善や薬物治療が必要かどうかを判断します。また、治療を開始した後の効果を確認するためにも行われます。

自覚症状がない段階で血管の老化を早期発見できる、非常に有用な検査です。


脂質異常症や高血圧の方が検査を受けるべき理由

脂質異常症や高血圧は、自覚症状がほとんどないまま進行します。 気づかないうちに血管を傷つけ、動脈硬化を進めてしまう「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」です。

症状がないからと放置すると、命に関わる病気を引き起こす可能性があります。 そのため、これらの病気と診断された方にとって、頸動脈超音波検査はご自身の血管の状態を知るために非常に重要です。

疾患名

血管への影響

なぜ検査が重要なのか

脂質異常症

血液中の余分な悪玉コレステロールなどが血管の壁に侵入し、「プラーク」と呼ばれる脂肪のこぶを作ります。このプラークが剥がれて血流に乗り、脳の血管を詰まらせると脳梗塞の原因になります。

プラークの有無や大きさ、危険性を評価し、脳梗塞のリスクを予測します。プラークが見つかれば、薬剤を投与するなどしてリスクの軽減を図ります。

高血圧

常に高い圧力がかかることで血管の壁は傷つき、弾力性を失って硬くなります。この状態が動脈硬化をさらに促進させ、血管が詰まったり破れたりするリスク(脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、大動脈瘤など)を高めます。

血管の壁の厚さから動脈硬化の初期変化を捉え、全体的な進行度を評価します。適切な血圧管理ができているか、治療効果を客観的に判断する指標にもなります。

糖尿病

高血糖の状態が続くと、血管の内側の細胞が傷つけられ、動脈硬化が進行しやすくなります。脂質異常症や高血圧を合併することも多く、動脈硬化のリスクがさらに高まります。

糖尿病の方は動脈硬化の進行が速い傾向にあるため、定期的な血管のチェックが推奨されます。

その他

喫煙、肥満、脳梗塞の家族歴がある方も動脈硬化のリスクが高いと考えられています。

症状が出る前にリスクを把握し、生活習慣の改善や予防的治療を開始するきっかけになります。

定期的に頸動脈の状態をチェックすることは、治療の効果を確認し、より適切な治療方針を立てる上で不可欠です。


検査で評価する動脈硬化の3つの指標(IMT・プラーク・狭窄)

頸動脈超音波検査では、動脈硬化の進行度を客観的に評価するために、主に以下の3つの指標を詳しく観察します。 これらの指標が何を示しているかを知ることで、ご自身の血管の状態をより深く理解できます。

  1. IMT(内膜中膜複合体厚:Intima-Media Thickness)  血管の壁は内側から「内膜」「中膜」「外膜」の3層構造です。  IMTは、このうち内膜と中膜を合わせた厚さのことで、動脈硬化の最も初期の変化を反映します。  一般的に、IMTが1.0mmを超えると初期の動脈硬化と判断され、注意が必要です。  全身の動脈硬化の指標となり、「血管年齢」を推定する目安にもなります。


  2. プラーク(粥腫:じゅくしゅ)  プラークは、血管の壁にコレステロールなどがたまってできた、こぶのような隆起です。  検査では、プラークの有無、大きさ、形、表面の状態などを詳細に観察します。  特に、表面がもろく崩れやすい「不安定プラーク」は、破れて血の塊(血栓)を作り、脳梗塞の直接的な原因となるため、慎重な評価が求められます。


  3. 狭窄(きょうさく)  プラークが大きくなることで、血液の通り道が狭くなる状態です。  検査では、血管が何%狭くなっているか(狭窄率)を測定します。  狭窄が高度になると脳への血流が不足したり、血管が完全に詰まったりするリスクが高まります。  狭窄の程度は、今後の治療方針(内服薬の調整や外科的治療の検討など)を決める上で非常に重要な情報となります。


脳梗塞や心筋梗塞のリスクを症状が出る前に発見できる仕組み

脳梗塞や心筋梗塞は、ある日突然起こる病気と思われがちです。 しかし、その背景には、何年もかけて静かに進行する「動脈硬化」が隠れています。

頸動脈超音波検査は、この目に見えない血管の変化を、症状が現れる前の段階で捉えることができる画期的な検査です。


動脈硬化から脳梗塞・心筋梗塞が起こるまでの流れ


  1. 初期変化(IMT肥厚)  高血圧や脂質異常症などにより、血管の壁(IMT)が厚くなり始めます。  (エコーで発見可能


  2. プラークの形成  血管の壁にコレステロールなどがたまり、プラークが形成されます。  この時点では自覚症状は全くありません。  (エコーで発見可能


  3. プラークの不安定化  プラークが大きくなったり炎症を起こしたりして、表面がもろく破れやすい状態になります。


  4. 血栓の形成  不安定なプラークが破れると、傷を修復しようと血小板が集まり、血の塊(血栓)ができます。


  5. 血管の閉塞(発症)  できた血栓が脳の血管に飛んで詰まれば「脳梗塞」、心臓の血管を詰まらせれば「心筋梗塞」を発症します。


頸動脈超音波検査は、上記のステップ1や2の、まだ症状が出ていない段階で血管の変化を発見できます。 病気が本格的に発症するずっと前にリスクを把握し、生活習慣の改善や薬物療法を開始することで、将来の深刻な病気を予防することにつながるのです。


頸動脈の状態から全身の血管の健康を予測する

「なぜ心臓や脳の病気のリスクを知るために、首の血管を調べるの?」と不思議に思われるかもしれません。 実は、首にある頸動脈は、全身の血管の健康状態を映し出す「窓」のような役割を果たしています。

動脈硬化は全身で同時に進行する病気です。 動脈硬化は、首の血管だけで起こるわけではありません。 心臓に血液を送る冠動脈、脳の血管、足の血管など、全身の動脈で同じように進行していきます。

頸動脈が「窓」として最適な理由は以下の通りです。


  • 体の表面に近く、超音波が届きやすいため観察しやすい

  • 比較的太い血管で、動脈硬化の初期変化から進行した状態まで詳細に評価できる

  • 脳に直接つながる重要な血管であり、ここの状態が脳の健康に直結する


このため、頸動脈の検査で動脈硬化が見つかった場合、それは目に見えない心臓や脳、足の血管でも同様に動脈硬化が進んでいる可能性が高いことを意味します。

頸動脈の所見

予測される全身の血管リスク

IMTの肥厚


(血管の壁が厚い)

全身の動脈硬化が始まっているサインです。

プラークの存在

心臓の血管(冠動脈)にもプラークが存在する可能性が高く、狭心症や心筋梗塞のリスク評価が必要です。

高度な狭窄

足の血管が詰まる病気(閉塞性動脈硬化症)など、他の血管でも高度な動脈硬化が進行している可能性があり、全身の精密検査を検討するきっかけになります。

このように、頸動脈の状態を調べることは、単に首の血管の状態を知るだけではありません。 全身の血管の健康を予測し、将来の深刻な病気を未然に防ぐための、非常に重要な手がかりとなるのです。



台東区の当院で受ける頸動脈超音波検査の特長

「健康診断で脂質異常症や高血圧を指摘された」 「自覚症状はないけれど、自分の血管の状態が気になる」

このように感じていても、どの医療機関に相談すればよいか迷う方も多いのではないでしょうか。 当院では、台東区にお住まい・お勤めの皆様が安心して動脈硬化のリスクを評価できるよう、精度の高い頸動脈超音波検査を提供しています。

専門の臨床検査技師による確かな技術と、医師による分かりやすい説明。 そして、お忙しい方でも通いやすい体制を整え、皆様の健康な未来をサポートします。


超音波技師による精度の高い診断と丁寧な説明

頸動脈超音波検査は、結果の正確さが検査者の技術に大きく左右される検査です。 プローブという探触子を当てる角度や力加減ひとつで、画像の鮮明さが変わり、診断の精度に直結します。

だからこそ当院では、専門的なトレーニングを積んだ臨床検査技師(超音波技師)が検査を担当します。 医師も超音波検査を行いますが、専門はあくまで病気の診断と治療です。 一方、臨床検査技師は、超音波で体を観察し、正確な画像を描き出すことの専門家です。

当院では、それぞれの専門家が役割を分担し、連携することで診断の質を高めています。

職種

主な役割

専門性・特長

臨床検査技師


(超音波技師)

正確な画像の描出と計測

・超音波検査に特化した「画像化のプロ」


・血管の走行や個人差を見極め、ミリ単位で精密に観察


・動脈硬化の初期変化や、危険なプラークを見逃さない技術を持つ

医師

総合的な診断と治療方針の決定

・検査結果と患者様の生活習慣や他のデータを統合して診断


・画像が示すリスクを、将来の病気と結びつけて分かりやすく解説


・生活習慣の改善や薬物治療など、最適な方針を提案

検査では、まず専門の技師が高性能な装置を使い、丁寧に血管の状態を観察します。 その後、医師がその客観的なデータをもとに、動脈硬化の進行度などを詳しくご説明します。

ご自身の血管の状態を「見える化」し、正しく理解していただくこと。 それが、今後の治療や生活習慣を見直すための、最も重要な第一歩になると考えています。 少しでも疑問や不安があれば、その場で気兼ねなくご質問ください。


忙しい方でも受診しやすい土曜検査も対応

「平日は仕事が忙しく、なかなか病院に行く時間が作れない」

働き盛りの世代にこそ、動脈硬化のリスクは潜んでいます。 しかし、自覚症状がないために、つい検査を後回しにしてしまいがちです。 脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気は、症状がないうちからの予防が何よりも大切です。

そこで当院では、お忙しい方でも検査を受けていただきやすいよう、土曜日にも頸動脈超音波検査を実施しています。 生活習慣病の指摘を受けた方やリスクのある方が、ためらうことなく検査を受けられる環境を整えました。


土曜日に検査を受ける3つのメリット


  1. 仕事を休まずに受診できる  平日のスケジュールを気にすることなく、週末を利用してご自身の体のメンテナンスができます。


  2. 落ち着いて検査・説明を受けられる  平日のように時間に追われることなく、リラックスして検査に臨めます。  検査後の説明でも、疑問点をじっくりと質問し、解消する時間を確保できます。


  3. 治療や経過観察を継続しやすい  定期的な検査が必要になった場合でも、土曜日に通院できるため治療の継続がしやすくなります。


検査は予約制となっておりますので、お電話または当院ウェブサイトからご予約ください。 脂質異常症や高血圧、糖尿病と診断された方、ご家族に脳梗塞や心筋梗塞の既往歴がある方は、一度ご自身の血管の状態を確認しておくことを強くお勧めします。



検査の具体的な流れと費用、注意点

「頸動脈超音波検査を受けることになったけど、どんな準備が必要なの?」 「時間はどのくらいかかる?」「費用はいくらくらいだろう?」

初めて検査を受ける際には、さまざまな疑問や不安がつきものだと思います。 ここでは、検査当日の流れから費用、注意点までを具体的にお伝えします。 皆様が安心して検査を受けられるようサポートしますのでご安心ください。

事前に流れを知っておくことで、当日はリラックスして検査に臨めます。


検査当日の受付から結果説明までの流れと所要時間

頸動脈超音波検査は、お体への負担が少なく、比較的短い時間で終わる検査です。 クリニックの混雑状況にもよりますが、受付からお会計まで含めた全体の所要時間は、通常1時間程度を見込んでいただくと安心です。

検査当日の大まかな流れは以下の通りです。

ステップ

内容

補足説明

Step 1:受付

保険証や診察券をご提出ください。

簡単な問診票にご記入いただく場合があります。ご自身の症状や既往歴、服用中のお薬などについてお伺いします。

Step 2:準備

順番になりましたら検査室へご案内します。

ベッドに仰向けになり、首元を広く開けていただきます。緊張せず、楽な姿勢でお待ちください。

Step 3:検査

首に冷たいゼリーを塗り、プローブという小さな機械を当てて血管を観察します。

検査時間は約15分です。検査中は、技師が「少し右を向いてください」などとお願いすることがあります。

Step 4:終了

検査が終わったら、看護師がゼリーを丁寧に拭き取ります。

ゼリーは水溶性で簡単に拭き取れます。着衣を整えて待合室でお待ちください。

Step 5:結果説明

検査画像をもとに、医師が結果を詳しくご説明します。

後日結果説明外来にて結果を詳しく説明させて頂きます。ご不明な点があれば何でもご質問ください。

頸動脈超音波検査の費用と保険適用の有無について

この検査は、医師が必要と判断した場合は健康保険が適用されます。 一方で、特に症状がない場合の人間ドックなどでは自費診療となります。


【保険適用となるケース】 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病で治療中の方。 めまい、ふらつき、手足のしびれなど、動脈硬化が原因と考えられる症状がある方。 その他、医師が診察の結果、検査の必要性を認めた場合に保険適用となります。


▼自己負担額の目安(保険適用の場合)

自己負担割合

費用の目安

1割負担

約500円~1,000円

2割負担

約1,000円~2,000円

3割負担

約1,500円~2,500円

※上記は検査のみの費用目安です。

 初診料や再診料、同時に行う他の検査によって費用は変動します。

【自費(自由診療)となるケース】 特に症状はないが、ご自身の動脈硬化のリスクを一度調べてみたい場合。 健康診断のオプションとして検査を希望される場合。

このような予防的な目的の場合は自費での検査となります。 当院での自費検査の費用は**5,500円(税込)**です。 ご自身のケースがどちらに該当するかご不明な場合は、お気軽にスタッフまでお問い合わせください。


検査を受ける際の服装や食事制限などの準備

頸動脈超音波検査を受けるにあたり、特別な準備はほとんど必要ありません。 食事制限や飲み物の制限もありませんので、普段通りの生活でお越しいただけます。


▼検査当日の準備チェックリスト

  • 食事について

    普段通りお食事をとっていただいて構いません。

  • お薬について

    いつも飲んでいるお薬は、医師の指示がない限り、通常通り服用してきてください。

  • 服装について

    首元を広く観察するため、襟元がゆったりと開く服装でお越しください。


▼服装の具体例

おすすめの服装

避けていただきたい服装

理由

・Tシャツ


・襟なしのシャツやブラウス


・VネックやUネックのセーター

・タートルネック、ハイネック


・襟の硬いシャツ


・パーカー


・ワンピース

首元が隠れてしまったり、フードが邪魔になったりするためです。ワンピースは着替えが必要になる場合があります。

また、検査の際にはネックレスや大きなイヤリングなどのアクセサリー類は外していただきます。 あらかじめ外してきていただくと、当日の準備がスムーズに進みます。



痛みや副作用は全くないのか?安心して受けるためのQ&A

超音波検査は、放射線被ばくがなく、合併症のリスクもほとんどない、極めて安全な検査です。 検査に対する不安を少しでも和らげるために、よくあるご質問にお答えします。


Q1. 検査中に痛みはありますか?

A1. 痛みはまったくありませんのでご安心ください。 首に検査用のゼリーを塗り、マイクのような機械(プローブ)を軽く当てるだけです。 ゼリーを塗る際に少しひんやりと感じる程度で、リラックスして受けていただけます。


Q2. 放射線被ばくの心配はありませんか?

A2. 心配は一切ありません。 この検査で使う超音波は、お腹のなかの赤ちゃんの様子を見るときにも使われる「音波」の一種です。 レントゲン検査やCT検査とは異なり、放射線を一切使用しないため、被ばくの心配はゼロです。


Q3. 副作用や合併症のリスクはありますか?

A3. 副作用や合併症の心配はほとんどありません。 検査で使用するゼリーは身体に無害なものですが、まれに肌の弱い方でかゆみなどが出ることがあります。 検査後すぐにきれいに拭き取りますので、ご安心ください。


▼頸動脈超音波検査の安心ポイント

  • ☑ 痛みは全くない

  • ☑ 放射線被ばくがない

  • ☑ 身体への負担が極めて少ない

  • ☑ 副作用の心配はほとんどない

  • ☑ 妊娠中の方でも受けられるほど安全

  • ☑ 必要に応じて何度でも繰り返し検査が可能

このように、頸動脈超音波検査は非常に安全な検査です。 何かご心配な点があれば、どんな些細なことでも医師やスタッフにお尋ねください。



検査結果の見方と動脈硬化が見つかった後の対策

検査お疲れさまでした。ご自身の血管の状態がどうなっているのか、結果を聞くまで不安な気持ちかもしれません。

頸動脈超音波検査は、自覚症状がない段階で動脈硬化を発見するための、いわば「未来の健康を守るための検査」です。

もし検査で何らかの異常が見つかったとしても、それは決して悪い知らせではありません。 むしろ、脳梗塞や心筋梗塞といった深刻な病気が起こる前に、対策を始める絶好の機会を得られたということです。

結果を正しく理解し、ご自身の状態に合わせた対策を今日から始めること。 それが、10年後、20年後も健康でいるための最も確実な一歩となります。 ここからは、検査結果の具体的な見方と、今後の対策について詳しく解説します。


検査結果報告書の読み解き方と正常値の目安

検査結果の報告書には、専門的な用語が並んでいるかもしれません。 しかし、ポイントさえ押さえれば、ご自身の血管の状態を正しく理解できます。 主に重要となるのは「IMT」「プラーク」「狭窄率」の3つの指標です。


1. IMT(内膜中膜複合体厚):「血管の壁の厚さ」 IMTは、血管の壁の厚さを示しており、動脈硬化の最も初期の変化を捉えます。 いわば「血管年齢」の指標です。年齢とともに誰でも少しずつ厚くなりますが、実年齢以上に厚い場合は注意が必要です。

  • 正常値の目安: 1.0mm未満

  • 1.1mm以上: 年齢以上に動脈硬化が始まっているサインです。


2. プラーク:「血管内のコレステロールのこぶ」 プラークは、血管の壁にコレステロールなどがたまってできた、こぶ状の隆起です。 これが大きくなると血管を狭め、もし破れてしまうと血の塊(血栓)を作り、脳梗塞の直接的な引き金になり得ます。

  • 評価項目: プラークの有無、大きさ、表面の性状(硬さ)などを評価します。

  • 特に危険なプラーク: 内部がドロドロで表面がもろい「不安定プラーク」は、破れやすいため極めて危険な状態です。


3. 狭窄率:「血液の通り道の狭さ」 プラークが大きくなることで、血液の通り道がどれくらい狭くなっているかを示す割合です。 狭窄が強くなると、脳に必要な血液が届きにくくなります。

評価項目

正常の目安

異常が見つかった場合の状態

IMT(壁の厚さ)

1.0mm未満

血管の壁が厚くなり、弾力性が失われ始めている。全身の動脈硬化の初期段階。

プラーク(こぶ)

なし

血管内にコレステロールの塊ができている。脳梗塞の潜在的な原因となり得る。

狭窄率(つまり具合)

狭窄なし

プラークによって血液の通り道が狭くなっている。脳への血流が不足する危険性がある。

これらの結果を総合的に判断し、医師があなたの動脈硬化の進行度を診断します。


検査結果により異なる治療方針

検査で動脈硬化が見つかった場合、その進行度に応じて今後の治療方針を決定します。 大切なのは、結果を放置せず、ご自身のステージに合った適切な対策を始めることです。

動脈硬化の治療は、どの段階であっても「生活習慣の改善」が全ての基本となります。 その上で、進行度に応じて薬物療法や専門的な治療を加えていきます。

動脈硬化の進行度

検査所見の例

主な治療方針と目的

初期

・IMTが軽度に厚い(1.1mm〜)


・小さな安定したプラークがある

【生活習慣の改善】


食事や運動、禁煙など生活全般を見直します。これ以上の進行を食い止め、血管の状態を改善させることが目標です。

進行期

・プラークが複数ある、または大きい


・軽度〜中等度の狭窄がある

【生活習慣の改善+薬物療法】


生活習慣の見直しに加え、薬の力で脂質や血圧、血糖を厳格に管理します。動脈硬化の進行にブレーキをかけ、プラークを安定させることが目標です。

重症期

・高度な狭窄がある(70%以上など)


・不安定なプラークがある

【厳格な薬物療法+専門的治療の検討】


脳梗塞のリスクが非常に高いため、薬物療法を最大限に行います。その上で、脳神経外科など専門医と連携し、手術(内膜剥離術)やカテーテル治療(ステント留置術)を検討します。

どの段階であっても、決して手遅れではありません。 医師と相談しながら、一緒に治療計画を立てていきましょう。


動脈硬化の進行を抑えるための食事・運動療法

動脈硬化の進行を食い止める鍵は、毎日の生活習慣にあります。 薬も非常に重要ですが、その効果を最大限に引き出すのも、生活習慣の改善です。


【食事療法のポイント:血管を元気にする食べ方】

バランスの良い食事を基本に、血管を傷つけるものを減らし、守るものを増やしましょう。

積極的に摂りたい栄養素と食品

控えるべき食品

青魚(サバ、イワシ、アジ): EPA・DHAが血液をサラサラにし、炎症を抑えます。

肉の脂身、バター、ラード: 飽和脂肪酸が多く、悪玉コレステロールを増やします。

大豆製品、野菜、きのこ、海藻: 食物繊維がコレステロールの吸収を抑えます。

洋菓子、スナック菓子: トランス脂肪酸を含み、血管にダメージを与えます。

オリーブオイル、ナッツ類: 良質な不飽和脂肪酸が、血管の健康をサポートします。

加工食品、インスタント食品、漬物: 塩分が多く、高血圧の原因になります。

緑黄色野菜、果物: 抗酸化作用のあるビタミンが、血管の老化を防ぎます。

果糖ブドウ糖液糖を含む清涼飲料水: 中性脂肪を増やし、肥満につながります。

まずは「減塩」と「野菜をもう一皿増やす」ことから始めてみましょう。


【運動療法のポイント:無理なく続ける】

適度な運動は、血行を促進し、血圧や脂質、血糖値を改善する効果があります。


  • おすすめの運動: ウォーキング、水中歩行、サイクリング、軽いジョギングなどの有酸素運動。

  • 頻度と時間の目安: 「ややきつい」と感じるくらいの強度で、1回30分以上、週に3日以上が目標です。

  • 禁煙の重要性: 喫煙は血管を直接傷つけ、動脈硬化を強力に促進します。どんな治療よりもまず禁煙が最優先です。


医師が処方する薬物療法の種類と目的

生活習慣の改善だけでは不十分な場合や、リスクが高い場合には薬物療法を行います。 薬は動脈硬化の原因となる病気をコントロールし、血管への負担を減らすお守りのような存在です。 自己判断で中断せず、医師の指示通りに続けることが何よりも大切です。

薬の種類

主な目的と作用

脂質異常症治療薬


(スタチンなど)

肝臓でのコレステロール合成を抑え、悪玉(LDL)コレステロールを強力に下げます。プラークを小さくしたり、安定させたりする効果も期待できます。

降圧薬


(高血圧治療薬)

血圧を適切な範囲に保ち、常に血管にかかる圧力を軽減します。血管が傷つくのを防ぎ、動脈硬化の進行を抑えます。

抗血小板薬


(血液をサラサラにする薬)

血小板が固まるのを防ぎ、危険な血栓ができるのを予防します。すでにプラークがあり、脳梗塞のリスクが高い場合に用いられます。

血糖降下薬


(糖尿病治療薬)

血糖値をコントロールし、高血糖によって血管の内壁が傷つけられるのを防ぎます。

これらの薬は、あなたの状態に合わせて最適に組み合わせて処方されます。 副作用が心配な時や、気になる症状がある際は、遠慮なく主治医に相談してください。


次はいつ受けるべき?推奨される定期検査の頻度

一度検査を受けたら終わり、ではありません。動脈硬化は生活習慣とともに変化する病気です。 定期的に検査を受けることは、治療の効果を確かめ、血管の状態を継続的に見守るために非常に重要です。

初回の検査結果や、もともとのご病気によって推奨される頻度は異なります。

初回検査の結果

推奨される検査頻度の目安

定期検査の目的

異常なし

2~3年に1回

健康な状態が維持できているかを確認します。

初期の動脈硬化あり

1年に1回

動脈硬化が進行していないか、生活習慣改善の効果が出ているかを評価します。

進行した動脈硬化あり

半年~1年に1回

薬物療法の効果を判定し、プラークの状態に危険な変化がないかを注意深く観察します。

脂質異常症・高血圧・糖尿病などで治療中の方

医師の指示によりますが、通常は1年に1回程度の検査が推奨されます。治療が適切かどうかを判断する重要な指標となります。


肝臓や膵臓の病気で定期的な超音波検査が推奨されるように、血管もまた「継続的な見守り」が必要です。 主治医と相談し、次回の検査時期を決め、ご自身の血管の状態を把握し続けること。 それが、脳梗塞や心筋梗塞からあなた自身を守るための、最も賢明な選択です。



まとめ

今回は、頸動脈超音波検査について詳しくご紹介しました。

この検査は、痛みや放射線被ばくの心配がなく、自覚症状のないまま静かに進行する「動脈硬化」を早期に発見できる、いわば「血管の健康診断」です。

健康診断で脂質異常症や高血圧を指摘された方にとって、ご自身の血管の状態を知ることは、脳梗塞や心筋梗塞といった深刻な病気を未然に防ぐための、非常に重要な第一歩となります。

たとえ異常が見つかっても、それはご自身の体と向き合い、生活習慣を見直すための絶好の機会です。症状がないからと安心せず、10年後、20年後の健康を守るために、一度お気軽に検査を受けてみてはいかがでしょうか。



参考文献

  • 頸動脈エコー検査ガイドライン2023

  • 動脈硬化を調べる超音波検査についてガイドライン2023



 
 
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