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糖尿病で生じる危険な合併症について解説

  • 1 日前
  • 読了時間: 22分

 「忙しい人向け|1分要約スライド」


 

糖尿病と診断されても、特に自覚症状がないため「まだ大丈夫」と安心していませんか?

しかし、その“症状がない”状態こそ、糖尿病の最も恐ろしい合併症が、気づかないうちに静かに進行しているサインかもしれません。高血糖は痛みなく全身の血管を少しずつ蝕んでいくのです。


放置した結果、失明(成人失明原因第2位)や人工透析(透析導入原因第1位)に至るだけでなく、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすことも。異変を感じた時には、元の健康な状態に戻すのが困難なケースも少なくありません。


この記事では、糖尿病が引き起こす合併症の正体と、その危険な初期症状について詳しく解説します。ご自身の体を守り、将来の深刻なリスクを避けるために、まずはその仕組みを正しく知ることから始めましょう。



糖尿病合併症とは?

糖尿病と診断されて、「合併症」という言葉に不安を感じる方は少なくありません。合併症とは、血糖値が高い状態が長く続くことで起こる、さまざまな体の病気です。


糖尿病になっても、初めはほとんど症状がないため、つい大丈夫だと思いがちです。しかし、血液中の糖が多すぎると、血液はドロドロになってしまいます。そのドロドロの血液が、全身に張り巡らされた血管の壁を少しずつ傷つけてしまうのです。


血管は、体に酸素や栄養を運ぶ大切な道路のようなものです。その道路が傷ついてボロボロになると、血の流れが悪くなります。結果として、体のすみずみまで大切な栄養が届かなくなり、さまざまな問題が起こります。これが糖尿病の合併症の正体です。


一度進んでしまった合併症は、残念ながら元の健康な状態に戻すのが難しい場合がほとんどです。だからこそ、合併症が起こる前に、その仕組みを正しく知って予防することが何よりも大切になります。


糖尿病の急性合併症

糖尿病の合併症には、突然症状が現れて、命の危険もある「急性合併症」があります。

これは、血糖値を下げるインスリンというホルモンが極端に足りなくなったり、逆に薬が効きすぎたりして、血糖値が異常な数値になることで起こります。

急性合併症には、主に次のような状態があります。


糖尿病ケトアシドーシス

インスリンが極端に不足し、体がエネルギーを作れなくなる状態です。

代わりに脂肪を燃やしますが、その際に「ケトン体」という酸性の物質が血液中に増えすぎます。

血液が酸性に傾いてしまう、非常に危険な状態です。


高浸透圧高血糖状態

感染症や脱水などをきっかけに、血糖値が異常に高くなることで起こります。

血液がまるでシロップのように濃くなり、体全体がひどい脱水状態に陥ります。

特に高齢の2型糖尿病の方にみられることがあります。


低血糖

糖尿病のお薬やインスリン注射が効きすぎて、血糖値が必要以上に下がってしまう状態です。意識がもうろうとしたり、昏睡状態に陥ったりすることがあり、迅速な対応が求められます。

これらの急性合併症は、すぐに治療が必要な緊急事態です。ご本人だけでなく、ご家族や周りの方も、万が一の時のために症状を知っておくことが重要です。


糖尿病の慢性合併症(長期間高血糖に暴露する事で生じる合併症)

糖尿病の合併症で、より多くの方に関わるのが「慢性合併症」です。急性合併症とは違い、何年もかけてゆっくりと静かに進行するのが特徴です。


高い血糖値によって、じわじわと全身の血管が傷つけられ、さまざまな臓器に障害が出てきます。初めは自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに病気が進行していることも少なくありません。


慢性合併症は、傷つく血管の太さによって、大きく2つのタイプに分けられます。

分類

障害される血管

代表的な合併症

細小血管症(さいしょうけっかんしょう)

目や腎臓などにある細い血管

糖尿病網膜症(目)


糖尿病腎症(腎臓)


糖尿病神経障害(神経)

大血管症(だいけっかんしょう)

心臓や脳につながる太い血管

心筋梗塞(心臓)


脳梗塞(脳)


末梢動脈疾患(足など)

特に、網膜症、腎症、神経障害は「糖尿病の三大合併症」と呼ばれ、生活に大きな影響を与えます。

例えば、網膜症は日本人の失明原因の第2位、腎症は人工透析になる原因の第1位となっています。


また、太い血管が傷つく大血管症は、動脈硬化が原因で起こります。これは心筋梗塞や脳梗塞など、命に直結する深刻な病気につながるため、非常に注意が必要です。

日本の大規模な研究では、血糖値だけでなく、血圧や脂質も厳格に管理することで、これらの合併症を大幅に減らせることがわかっています。


慢性合併症は、血糖コントロールが良くないほど、また糖尿病の期間が長いほど、発症しやすくなります。定期的な検査で体の状態をチェックし、きちんと治療を続けることが、将来の健康を守る鍵となります。



糖尿病の急性合併症について詳しく解説

糖尿病の合併症には、ゆっくり進行する慢性合併症とは別に、急激に命を脅かす「急性合併症」があります。これは血糖値が急に高くなりすぎたり、逆に低くなりすぎたりすることで、短時間のうちに意識がもうろうとするなど、危険な状態に陥るものです。


急性合併症は、適切な対応が少しでも遅れると、深刻な後遺症を残したり、命に関わったりすることがあります。


そのため、どのような状態なのかを正しく知っておくことが非常に大切です。ご自身だけでなく、ご家族にも起こりうる緊急時のサインと対処法を理解し、万が一の事態に備えましょう。


糖尿病ケトアシドーシス

糖尿病ケトアシドーシスは、体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を、細胞がうまく利用できなくなることで起こる、非常に危険な状態です。


私たちの体を車に例えると、インスリンは「ガソリンをエンジンに送るための鍵」のような働きをしています。このインスリンが極端に不足すると、鍵がない状態になり、血液中にガソリン(ブドウ糖)はたくさんあっても、エンジン(細胞)に送ることができません。


その結果、体はエネルギー不足に陥り、非常事態として体に蓄えられた脂肪を燃やし始めます。この時に「ケトン体」という酸性の燃えカスが大量に発生し、血液が酸性に傾いてしまうのです。血液が酸性になると、体全体のシステムが正常に働かなくなり、命の危険にさらされます。


主に1型糖尿病の方に起こりやすいですが、2型糖尿病の方でも以下のようなきっかけで発症することがあります。

  • 清涼飲料水の多量摂取(ペットボトル症候群)

  • 感染症(肺炎やひどい風邪など)

  • 手術や大きな怪我


主な症状

  • ひどい喉の渇き、異常な量の水分を飲む

  • 尿の量や回数がとても増える

  • 吐き気や嘔吐、我慢できないほどの腹痛

  • 深く、大きな呼吸(クスマウル大呼吸)

  • 息が果物のような甘酸っぱい匂いになる(アセトン臭)

  • 意識がもうろうとし、やがて昏睡状態に陥る


最近では、SGLT2阻害薬という種類の糖尿病治療薬を服用している場合、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシス(正常血糖ケトアシドーシス)が起こることが報告されており、注意が必要です。この状態は緊急治療が必要で、点滴による水分補給やインスリン投与を迅速に行わなければなりません。


高浸透圧高血糖状態

高浸透圧高血糖状態は、血糖値が異常なレベルまで上昇し、血液が濃縮されて、体全体が極度の脱水状態に陥る、命に関わる状態です。


血糖値が600mg/dL、時には1000mg/dLを超えると、血液はまるで濃いシロップのようになります。すると、浸透圧の力で体中の細胞から水分が血液中に吸い出されてしまい、全身がカラカラの脱水状態になってしまうのです。


特に、ご高齢の2型糖尿病の方に起こりやすいとされています。インスリンの働きが完全になくなっているわけではないため、ケトアシドーシスは起こりにくいのが特徴です。


きっかけとなりやすい状況

  • 感染症(肺炎、尿路感染症など)

  • 脱水(下痢、嘔吐、水分摂取不足)

  • 脳梗塞や心筋梗梗塞といった他の病気の発症

  • 一部の薬(ステロイドなど)の影響


主な症状

  • 極度の喉の渇き

  • 皮膚や口の中がカラカラに乾燥する

  • 尿の量が著しく減る

  • 意識が低下し、呼びかけへの反応が鈍くなる

  • けいれんを起こすことがある


この状態は、数日から数週間かけてゆっくりと進行するため、ご本人も周囲も気づきにくいことがあります。「最近なんだか元気がない」「いつもと様子が違う」といったご家族の気づきが、早期発見の鍵となります。治療は、大量の点滴で脱水状態を改善することが中心となります。


低血糖性昏睡

低血糖は、糖尿病のお薬やインスリン注射が効きすぎて、血液中のブドウ糖濃度が下がりすぎた状態(一般に70mg/dL未満)を指します。脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源としているため、血糖値が低くなりすぎると脳がエネルギー不足に陥り、意識障害や昏睡に至ることがあります。


低血糖の主な原因

  • 食事の時間が遅れた、または食事を抜いた

  • 処方された薬やインスリンの量が多かった

  • 予定よりも激しい運動をした

  • 空腹の状態でアルコールを摂取した


低血糖の症状は、段階的に現れるのが特徴です。初期のサインに気づき、すぐに対処することが何よりも重要です。

段階

症状

初期症状(警告症状)

冷や汗、動悸、手足の震え、強い空腹感、不安感

進行した場合

めまい、脱力感、集中力の低下、言葉が出にくい、異常な行動

重症化した場合

けいれん、意識を失う(昏睡)

初期症状の段階でブドウ糖や砂糖を含むジュースなどを速やかに摂取すれば、ほとんどの場合は回復します。

しかし、対応が遅れて重症化すると自力での回復は難しくなり、命の危険もあります。


急性合併症を疑うべき症状とご家族もできる緊急時の対処法

急性合併症は、ご本人が自分で気づいて対応することが難しい場合も少なくありません。いざという時に備えて、ご家族や周りの方も、危険なサインと対処法を知っておくことが、命を救うことにつながります。


【危険なサイン】こんな症状は要注意!

  • 意識がはっきりしない、もうろうとしている

  • 呼びかけへの反応がおかしい、つじつまが合わない話をする

  • ひどい吐き気や腹痛を訴えている

  • 呼吸が異常に速い、または深く大きい呼吸をしている

  • けいれんを起こしている

  • ひどい冷や汗をかいている


これらの症状が見られた場合は、高血糖か低血糖かの判断に迷わず、すぐに救急車を呼びましょう。

ご家族ができる緊急時の対応

状況

対処法

意識がある場合


(低血糖が疑われる)

1. ブドウ糖(10g)や、砂糖(20g)を含むジュースなどを飲ませてください


2. 15分ほど安静にして様子を見ます


3. 回復しない、または再び症状が出る場合は医療機関に連絡するか、救急車を呼びます

意識がない・もうろうとしている場合


(高血糖・重症低血糖の両方の可能性)

1. ためらわずに、すぐに救急車を呼んでください


2. 窒息を防ぐため、絶対に無理に食べ物や飲み物を口に入れないでください


3. 吐いたもので喉を詰まらせないよう、体を横向きにして気道を確保します

普段から、お薬手帳や糖尿病連携手帳をすぐに持ち出せる場所に保管し、かかりつけ医療機関の連絡先を家族で共有しておくことも、万が一の際に役立ちます。



糖尿病慢性合併症の種類と危険な初期症状について詳しく解説

「最近、目がかすむ」「手足がピリピリする」といった体のサインに、不安を感じている方もいるかもしれません。

糖尿病の慢性合併症は、血糖値が高い状態が長く続くことで、全身の血管が少しずつダメージを受けて起こります。


怖いのは、最初のうちは自覚できる症状がほとんどなく、静かに病気が進行してしまう点です。気づいた時には、かなり進んでしまっているケースも少なくありません。


しかし、合併症について正しく理解し、ご自身の体の変化に早く気づくことができれば、進行を食い止められます。


ここでは、糖尿病が引き起こす慢性合併症の種類と、特に注意すべき初期症状を丁寧に解説します。


三大合併症

糖尿病の慢性合併症の中でも、特に代表的で注意が必要なのが「三大合併症」です。これは、目や腎臓、神経に集まる細い血管(細小血管)が傷つくことで起こる病気の総称です。


糖尿病網膜症(もうまくしょう)

目に起こる合併症


糖尿病腎症(じんしょう)

腎臓に起こる合併症


糖尿病神経障害(しんけいしょうがい)

神経に起こる合併症


これらの合併症は、糖尿病と診断されてから数年から10年以上かけてゆっくりと進行します。中でも神経障害は比較的早く、5年ほどで症状が出始めることもあるため、早期からの注意が大切です。いずれも初期には症状が出にくいため、定期的な検査で体の状態をチェックすることが何よりも重要になります。


網膜症

糖尿病網膜症は、目の奥にある「網膜」という光を感じるスクリーンのような部分の血管が傷つく病気です。網膜の血管がダメージを受けると、視力に深刻な影響を及ぼします。

現在、日本で大人になってから失明する原因の第2位が、この糖尿病網膜症です。


網膜症の進行と症状

進行段階

血管の状態と症状

初期

網膜の細い血管に小さなこぶができたり、わずかな出血が起きたりします。この段階では、自覚症状はほとんどありません。

中期

血管が詰まり始め、網膜に酸素や栄養が届きにくくなります。目がかすむといった症状が出ることがありますが、まだ気づかない人も多いです。

末期

酸素不足を補うためにもろくて破れやすい「新生血管」という異常な血管が伸びてきます。この血管が破れて大出血したり、網膜剥離を起こしたりします。急な視力低下や、黒い点やゴミのようなものが見える「飛蚊症(ひぶんしょう)」といった、はっきりとした症状が現れます。この段階になると失明の危険性が非常に高くなります。

このように、はっきりとした症状が出た時には、すでにかなり進行している可能性があります。糖尿病と診断されたら、症状がなくても1年に1回は眼科で「眼底検査」を受けることが、視力を守るために不可欠です。


腎症

糖尿病腎症は、腎臓の中にある無数の細い血管が傷つき、腎臓の機能が低下していく病気です。腎臓は、血液の中のいらない老廃物をこし取って、尿として体の外に出す大切なフィルターの役割をしています。現在、日本で人工透析が必要になる最も多い原因が、この糖尿病腎症です。


腎症の進行と症状

初期段階

自覚症状は全くありません。しかし、尿検査をすると「微量アルブミン」というごくわずかなタンパク質が漏れ出しているのがわかります。このサインを早期に発見し、治療を始めることが腎臓を守る鍵です。


中期段階

尿から漏れ出るタンパク質の量が増えてきます。この頃から、足や顔の「むくみ」、体が「だるい」、貧血などの症状が現れ始めます。


末期段階(腎不全)

腎臓のフィルター機能がほとんど失われ、体に毒素が溜まってしまいます。こうなると、自分の腎臓の代わりに血液をきれいにする「人工透析」や、「腎移植」といった治療が必要になります。


腎症も初期には全く症状がないため、糖尿病と診断されたら定期的な尿検査や血液検査が欠かせません。ご自身の腎臓の状態をきちんと把握し続けることが、将来の透析を防ぐことにつながります。


神経障害

糖尿病神経障害は、高い血糖値が続くことで神経細胞そのものや、神経に栄養を送る血管が傷ついて起こります。三大合併症の中では最も早く症状が現れることがあり、体のさまざまな場所に影響を及ぼします。


神経障害の主な症状

感覚・運動神経の障害

両足の裏や指先に、ピリピリ、ジンジンとしたしびれや痛みを感じます。特に夜間に症状が強くなるのが特徴です。

足の裏に紙が一枚貼ってあるような、感覚の鈍さを感じることもあります。

進行すると、熱さや冷たさ、痛みなどを感じにくくなります。


自律神経の障害

立ち上がった時にクラっとする「立ちくらみ」が起こりやすくなります。

胃の動きが悪くなり、もたれや便秘、下痢を繰り返すことがあります。

尿が出にくくなったり、逆にトイレが近くなったりします。

汗のかき方が異常になることもあります。

特に危険なのは、痛みを感じにくくなることです。足にタコや靴擦れができても気づかず放置してしまい、そこから細菌に感染して、後述する「足の壊疽(えそ)」という深刻な状態に進んでしまう危険があります。


命に関わる大血管障害(心筋梗塞・脳梗塞)のリスク

糖尿病は、細い血管だけでなく、心臓や脳につながる太い血管にも「動脈硬化」を引き起こし、深刻なダメージを与えます。動脈硬化とは、血管が硬く、狭くなる状態のことです。

糖尿病の方は、高血糖に加えて、高血圧や脂質異常症(悪玉コレステロールが高い状態)を合併しやすく、動脈硬化が健康な人よりも早く、そして深刻に進む傾向があります。

これらが原因で起こるのが、命に直結する「大血管障害」です。


心筋梗塞・狭心症 心臓を動かすための血液を送る「冠動脈」が動脈硬化で狭くなったり、詰まったりする病気です。

突然の激しい胸の痛みが特徴ですが、神経障害があると痛みを感じにくい「無痛性心筋梗塞」を起こすこともあり、発見が遅れる危険があります。

脳梗塞

脳の血管が詰まり、脳の組織がダメージを受ける病気です。

突然、手足が動かなくなったり、言葉がうまく話せなくなったりします。

末梢動脈疾患

主に足の血管が動脈硬化で狭くなり、血の流れが悪くなる病気です。

歩くとふくらはぎが痛くなり、休むと治まるという症状が特徴です。


日本の大規模な研究では、血糖値だけでなく、血圧や脂質も厳格に管理することで、これらの合併症を大幅に減らせることがわかっています。命を守るためには、血糖、血圧、脂質の3つを総合的に管理することが非常に重要です。


見過ごしがちな足の壊疽・歯周病・認知症との関連

三大合併症や大血管障害以外にも、糖尿病と深く関わる病気があります。これらは生活の質を大きく下げるため、注意が必要です。


足病変(潰瘍・壊疽)

足のトラブルは、以下の3つの悪い条件が重なることで起こりやすくなります。

  • 神経障害:痛みを感じにくく、傷に気づかない


  • 血流障害:傷を治すための栄養や酸素が届かない


  • 免疫力の低下:細菌に感染しやすくなる


小さな靴擦れや水虫を放置した結果、傷が治らずに皮膚がえぐれ(潰瘍)、最終的に組織が死んでしまう「壊疽(えそ)」に至ることがあります。

壊疽が広がると、足の切断が必要になる場合もあり、毎日の足の観察(フットケア)が非常に大切です。


歯周病

糖尿病と歯周病は、互いに悪影響を及ぼし合う関係にあることがわかっています。

糖尿病で免疫力が落ちると歯周病が悪化しやすくなります。

逆に、歯周病による炎症はインスリンの働きを邪魔して、血糖コントロールを悪化させる原因にもなります。

良好な血糖コントロールを保つためにも、定期的な歯科受診と丁寧な歯磨きを心がけましょう。


認知症

最近の研究では、糖尿病の人はそうでない人と比べて、アルツハイマー型認知症や血管性認知症になるリスクが高いことがわかってきました。

高血糖や動脈硬化が、脳の神経細胞にダメージを与えたり、脳の血流を悪くしたりすることが原因と考えられています。

血糖値を良好に保つことは、将来の脳の健康を守ることにもつながるのです。



合併症の進行を防ぐための検査と治療法

糖尿病の合併症は、気づかないうちに静かに進行します。しかし、定期的な検査と適切な治療を続けることで、その進行を食い止め、遅らせることは十分に可能です。

合併症の予防で最も大切なのは、早期発見と治療の継続です。ここでは、ご自身の体を守るために知っておいてほしい、合併症の検査と治療法について具体的に解説します。


合併症を早期発見するために受けるべき定期検査の種類と頻度

合併症の多くは、かなり進むまで自覚症状が現れません。「まだ症状がないから大丈夫」と思わず、定期的に検査を受け、体の小さな変化を早めに捉えることが重要です。

糖尿病の治療は、血糖値の管理と同じくらい、合併症のチェックが大切です。受けるべき主な検査の種類と頻度の目安は以下の通りです。

検査の種類

検査でわかること

推奨される頻度の目安

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

過去1〜2ヶ月の血糖コントロール状態の平均点がわかります。治療効果の判断に不可欠です。

1〜2ヶ月に1回

眼底検査

目の奥にある網膜の血管の状態を直接観察し、網膜症の有無や進行度を調べます。

症状がなくても年に1回以上

尿検査(微量アルブミン)

腎症の最も早いサインである、ごく微量のタンパク質が尿に漏れていないかを調べます。

年に1回以上

血圧測定

高血圧は動脈硬化を進め、腎症や網膜症を悪化させるため、毎回チェックします。

医療機関の受診ごと

血液検査(脂質)

悪玉コレステロールなどを調べ、動脈硬化のリスクがどのくらいあるかを評価します。

年に1回以上

足の診察

神経障害による感覚の低下や、血流が悪くなっていないかを、傷や皮膚の色などから確認します。

医療機関の受診ごと

これらの検査の中でも、特にHbA1cは治療の成績表のようなものです。HbA1cが1%低下すると、細い血管の合併症リスクが25%も減少するというデータもあります。定期的な検査で体の状態を把握することが、将来の健康を守る第一歩です。


血糖値だけじゃない!血圧・脂質管理の重要性と具体的な目標値

「糖尿病の治療は血糖値を下げること」と思われがちですが、実はそれだけでは不十分です。心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる合併症は、高血糖・高血圧・脂質異常症の3つが合わさることで、動脈硬化が急激に進んでしまいます。


血管を健康に保つためには、この3つの危険因子をまとめて管理することが非常に重要です。実際に、日本のJ-DOIT3という大規模な研究では、血糖・血圧・脂質を厳格に管理することで、脳卒中や腎症、網膜症の発症を大きく抑えられることが証明されています。


それぞれの管理目標値の目安は以下の通りです。

管理項目

目標値の目安

血糖コントロール

HbA1c 7.0% 未満

血圧管理

130 / 80 mmHg 未満

脂質管理

LDL(悪玉)コレステロール:120 mg/dL 未満


HDL(善玉)コレステロール:40 mg/dL 以上


中性脂肪:150 mg/dL 未満

ただし、これらの目標値は年齢や他に持っている病気によって一人ひとり異なります。ご自身の目標値については、必ず主治医と相談して決めましょう。


合併症の種類別治療法|薬物療法からレーザー治療・手術まで

万が一、合併症が見つかっても、早期であれば進行を抑えるための様々な治療法があります。症状の悪化を防ぎ、今の生活を維持するために、適切な治療を始めることが大切です。


網膜症

レーザー光凝固術

網膜の血流が悪い部分にレーザーを当て、異常な血管(新生血管)ができるのを防ぐ治療法です。

抗VEGF薬治療

新生血管の発生や成長を促す物質の働きを抑えるお薬を、直接目の中に注射する治療です。

硝子体手術

目の中に出血が広がったり、網膜剥離が起こったりした場合に行われます。


腎症

食事療法

たんぱく質や塩分の摂取量を調整し、腎臓への負担を軽くします。

薬物療法

血圧を下げるお薬(ACE阻害薬やARBなど)は、腎臓の血管の圧力を下げ、腎臓を保護する働きがあります。

透析療法

腎臓の機能が著しく低下した場合に、機械で血液をきれいにする治療です。


神経障害

血糖コントロール

何よりもまず、良好な血糖コントロールを維持することが、症状の悪化を防ぐ基本です。


薬物療法

つらいしびれや痛みといった症状を和らげるためのお薬を使用します。

治療法は合併症の種類や進行度によって異なります。

どの治療が最適か、主治医とよく相談しながら進めていきましょう。


無理なく続けられる食事療法・運動療法の具体的なコツ

合併症の予防や進行を遅らせる上で、お薬と並んで主役となるのが、日々の食事と運動です。「制限」と考えると辛くなりますが、「健康な体を作るための工夫」と捉え、無理なく続けられることを見つけるのが長続きの秘訣です。


食事療法のコツ

食べる順番を工夫する

「野菜・きのこ」→「肉・魚」→「ごはん」の順で食べると、食物繊維が糖の吸収を穏やかにしてくれます。


ゆっくり、よく噛んで食べる

脳が満腹を感じやすくなり、食べ過ぎを防ぐ効果があります。


塩分を控える工夫をする

お酢やレモン、香辛料を使うと、薄味でも料理の風味が増して美味しく食べられます。


運動療法のコツ

まずは「ながら運動」から始める

テレビを見ながらその場で足踏みをするなど、生活の中に体を動かす機会を増やしてみましょう。


食後30分~1時間後がチャンス

食事で上がった血糖をエネルギーとして消費するため、血糖値の上昇を効果的に抑えられます。


有酸素運動を週に150分

ウォーキングなど、少し汗ばむくらいの運動を、例えば「1回30分を週5日」のように行うのが目標です。


エレベーターより階段を選ぶ

日常生活での少しの心がけが、大きな違いを生み出します。

完璧を目指す必要はありません。ご自身の生活スタイルに合わせて、できることから一つずつ始めてみましょう。



糖尿病合併症Q&A

ここでは、患者さんからよくいただく合併症に関する質問に、一つひとつ丁寧にお答えします。


Q1. 合併症は一度なってしまったら、もう治らないのでしょうか?

合併症の種類や、どのくらい進んでいるかによって異なります。一度傷ついてしまった血管を、完全に元通りにすることは難しいのが現実です。


しかし、決してあきらめる必要はありません。特に三大合併症は、ごく初期の段階であれば改善が期待できます。例えば腎症は、尿に微量のたんぱく質が出始めた段階でしっかり治療すれば、進行を止められる可能性があります。


大切なのは、早期に発見し、血糖コントロールを続けることです。そうすることで、病気の進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることは十分に可能です。


Q2. 今は何も症状がないのに、どうして検査が必要なのですか?

症状がないうちに静かに進行するのが、糖尿病合併症の一番怖い特徴だからです。血管は、痛みなどを感じないまま、少しずつダメージを受けていきます。


例えば、腎症は足がむくむなどの症状が出た時には、かなり進行しています。網膜症も、目が見えにくいと感じた時には、失明の危険が迫っていることもあります。


症状がない「今」だからこそ、定期検査で体の状態を知ることが大切です。それが、将来のあなたの目や腎臓、そして命を守ることに直接つながります。


Q3. 合併症を防ぐために、日常生活で一番大切なことは何ですか?

合併症を防ぐためには、以下の3つのポイントを意識することがとても大切です。


血糖・血圧・脂質の管理を徹底する

血糖値だけでなく、血圧やコレステロール値も厳格に管理しましょう。これらは3つセットで動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。


毎日のセルフチェックを習慣にする

特に足の観察(フットケア)は重要です。毎日お風呂上がりなどに、傷や色の変化がないか見てください。神経障害が進むと、小さな傷に気づかず、足の切断につながる危険があります。


定期的な歯科検診を受ける

歯周病は、糖尿病を悪化させることがわかっています。丁寧な歯磨きと歯科でのケアが、血糖コントロールを助けることにもなります。



まとめ

今回は、糖尿病が引き起こす様々な合併症について解説しました。


糖尿病の合併症は、自覚症状がないまま静かに進行するため「サイレントキラー」とも呼ばれます。

気づいた時には失明や透析、足の切断といった深刻な事態につながることも少なくありません。


しかし、合併症は決して避けられないものではありません。

大切なのは、血糖値だけでなく血圧や脂質もきちんと管理し、症状がなくても定期的な検査をきちんと受けることです。

ご自身の体の状態を正しく知り、日々の小さなケアを続けることが、10年後、20年後の健康を守るための最も確実な一歩となります。


合併症を正しく恐れ、主治医と二人三脚で治療に取り組んでいきましょう。


参考文献

  1. 糖尿病合併症とその対策

  2. 糖尿病の合併症|たにがわクリニック|栗東市の内科

  3. 3大合併症|さや内科・糖尿病クリニック|津市

 
 
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