コレステロールって何?役割や高くなると生じる病気を解説
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健康診断で「コレステロールが高い」と指摘され、不安を感じた経験はありませんか?多くの方がコレステロールに「悪者」というイメージをお持ちかもしれませんが、実は私たちの体が健康に機能するために不可欠な成分なのです。
しかし、そのバランスが崩れると、血管の中で静かに動脈硬化が進行し、やがて心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
この記事では、コレステロールの正しい役割から、悪玉・善玉コレステロールの違い、高くなる原因、そして具体的な改善策まで、医師が詳しく解説します。あなたのコレステロールに対する誤解を解消し、健康な未来を守るための一歩を踏み出しましょう。
コレステロールの基本とその役割
健康診断の結果を見て、「コレステロールが高い」と指摘され、不安を感じた経験がある方は少なくないでしょう。コレステロールという言葉を聞くと、なんとなく「悪いもの」「病気の原因になるもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは誤解です。実はコレステロールは、私たちの体が健康に機能するために、なくてはならない大切な成分なのです。
クリニックの現場でも、多くの患者さんがコレステロールについて誤った知識を持っています。この章では、コレステロールが体内でどのような重要な役割を担っているのか、その基本から分かりやすく解説していきます。正しい知識を身につけて、ご自身のコレステロール値と上手に付き合っていくための一歩を踏み出しましょう。
コレステロールは悪者じゃない?必須な理由と体の働き
「コレステロール=悪者」というイメージは、必ずしも正しくありません。コレステロールは、体にとって非常に重要な役割を担う、生命維持に欠かせない脂質の一つです。全身の約60兆個もの細胞の膜を作る材料になったり、さまざまなホルモンやビタミンD、消化に必要な胆汁酸のもとになったりと、多くの働きをしています。もしコレステロールが不足してしまうと、細胞がもろくなったり、ホルモンのバランスが崩れたりして、体に不調が生じる可能性があるのです。
具体的に、コレステロールは体内で次のような大切な働きをしています。
細胞膜の構成要素
体のすべての細胞を覆う「細胞膜」の主要な材料です。
細胞の形を保ち、細胞の内外の物質のやり取りを調節する、重要な役割があります。
ホルモンの材料
ストレスへの反応や性機能に関わる「ステロイドホルモン」の原料になります。
例えば、副腎皮質ホルモンや、男性ホルモン・女性ホルモンといった性ホルモンがこれにあたります。
胆汁酸の材料
脂肪の消化吸収を助ける「胆汁酸」の原料となります。
胆汁酸は肝臓で作られ、脂肪を細かく分解して、消化酵素が働きやすいようにする役割があります。
ビタミンDの材料
骨の健康維持に欠かせない「ビタミンD」も、コレステロールから作られます。
ビタミンDは、食べ物から摂ったカルシウムの吸収を助ける働きがあります。
このように、コレステロールは私たちの体にとって、非常に重要な働きを担っています。
体内のコレステロールは、食事から取り入れられる分もありますが、その大部分は約70~80%が肝臓や小腸で合成されています。食事からのコレステロール摂取量が血中コレステロール値に直接影響する根拠は、実は十分ではないとされています。これは、体内で必要なコレステロールが合成される量が、食事からの摂取量に応じて調節されるためです。
しかし、脂質異常症の重症化を予防するため、日本人の食事摂取基準(2025年版)では、コレステロール摂取量を1日200mg未満に留めることが望ましいとされています。令和元年度の国民健康・栄養調査によると、成人男性のコレステロール摂取量は約314~399mg/日、女性は約295~334mg/日であり、推奨値よりも多く摂取している傾向が見られます。コレステロールの主な摂取源は、卵類が約半分を占め、その他に肉類や魚介類からの摂取が多いことが分かっています。
血中コレステロール値が高い方は、過剰摂取を避ける注意が必要ですが、高齢者の方では、コレステロールの摂取制限がたんぱく質不足や低栄養を招く可能性もあります。そのため、ご自身の状態に合わせて、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。コレステロールは血液にそのまま溶けることができないため、「リポたんぱく」と呼ばれるカプセル状の乗り物に乗って、全身を巡っています。このリポたんぱくには、主に「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」の2種類があり、それぞれ異なる役割を果たしているのです。
善玉と悪玉の違い:HDL・LDLコレステロールの具体的な働き
コレステロールには、「善玉」と「悪玉」という言葉で呼ばれる種類があります。これらは正式には「HDLコレステロール」と「LDLコレステロール」と呼ばれ、それぞれが体内で異なる大切な働きをしています。これらの違いを理解することが、コレステロール管理の第一歩となります。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に届ける役割を担っています。体に必要なコレステロールを、肝臓という製造工場から、体の隅々の細胞という消費地まで運ぶ「配送便」のようなイメージです。細胞はLDLコレステロールから必要なコレステロールを受け取ります。しかし、LDLコレステロールが多すぎると、細胞で使いきれなかった余分なコレステロールが血管の壁に溜まりやすくなってしまいます。この溜まったコレステロールが動脈硬化の原因となることから、「悪玉コレステロール」と呼ばれているのです。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
一方、HDLコレステロールは、全身の細胞や血管の壁に余ってしまったコレステロールを回収し、再び肝臓に戻す役割を持っています。こちらは、血管という道路の清掃をする「回収便」のような働きをしています。血管の壁にコレステロールが溜まるのを防ぎ、動脈硬化の進行を抑える働きがあるため、「善玉コレステロール」と呼ばれています。HDLコレステロールの値が高いほど、血管がきれいになる効果が期待できると言われています。
体内のコレステロール量は、LDLコレステロールによる供給と、HDLコレステロールによる回収のバランスによって保たれています。このバランスが崩れてしまうと、血管内にコレステロールが過剰に蓄積しやすくなり、動脈硬化のリスクが高まります。特に、LDLコレステロールが多くなりすぎたり、HDLコレステロールが少なすぎたりする状態は注意が必要です。
中性脂肪との関係性とその役割
コレステロールと健康診断でよく一緒に耳にする「中性脂肪」も、私たちの体にとって重要な脂質の一つです。しかし、中性脂肪はコレステロールとは異なる働きを持っています。中性脂肪は、主に体のエネルギー源として蓄えられたり、体温を保つ断熱材の役割をしたりしています。食事から摂取した糖質や脂質がエネルギーとして使われずに余ると、中性脂肪として体脂肪に蓄えられます。
中性脂肪の主な役割
エネルギー源
体を動かすための重要なエネルギー源となります。
脂肪として蓄えられ、必要な時に分解されて利用されます。
体温の保持
皮下脂肪として蓄積され、外気から体を守り、体温を一定に保つ役割があります。
内臓の保護
内臓の周りにも存在し、衝撃から内臓を保護するクッションのような働きをしています。
コレステロールと中性脂肪の違い
項目 | コレステロール | 中性脂肪 |
主な役割 | 細胞膜の構成、ホルモン・胆汁酸・ビタミンDの原料 | エネルギー源、体温保持、内臓保護 |
特徴 | 体内で合成される比率が高い | 食事からの摂取や糖質からの合成が多い |
過剰な場合 | 動脈硬化の直接的な原因になりやすい | 肥満、動脈硬化、急性膵炎のリスクを高める |
運搬方法 | LDLやHDLなどのリポたんぱく質に包まれて運ばれる | 血液中では主にVLDL(超低比重リポたんぱく質)に包まれて運ばれる |
中性脂肪の量が多すぎると、それ自体が動脈硬化を進行させる要因となるだけでなく、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ったりするなど、他の脂質のバランスにも悪影響を及ぼすことがあります。特に、お腹周りの内臓脂肪として中性脂肪が蓄積されている場合は、生活習慣病のリスクがさらに高まります。コレステロール値だけでなく、中性脂肪の値も健康管理において非常に重要な指標となるのです。
正常値を知ろう!コレステロールの基準値と見方
健康診断の結果を受け取った際、コレステロールや中性脂肪の数値を見て、「この値は高いのだろうか?」「低いのだろうか?」と疑問に思うかもしれません。ご自身の数値がどのような状態にあるのかを理解するためには、基準値を知ることが大切です。
脂質異常症の診断基準(成人)
以下のいずれかの値に当てはまる場合、「脂質異常症」と診断されます。
検査項目 | 診断基準値(空腹時採血) | 説明 |
LDLコレステロール(悪玉) | 140mg/dL以上 (高LDLコレステロール血症) | 血管壁にコレステロールを蓄積させ、動脈硬化を進めます。 |
HDLコレステロール(善玉) | 40mg/dL未満 (低HDLコレステロール血症) | 余分なコレステロールの回収が滞り、動脈硬化のリスクを高めます。 |
中性脂肪 | 150mg/dL以上 (高トリグリセライド血症) | エネルギー過多のサインで、動脈硬化や急性膵炎のリスクがあります。 |
Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 (高Non-HDLコレステロール血症) | LDLだけでなく、他の悪玉とされるリポたんぱく質に含まれるコレステロールも評価できる指標です。動脈硬化のリスクをより総合的に判断します。 |
これらの基準値は一般的な目安です。しかし、私たちのクリニックでは、個々の患者さんの背景を詳しく伺い、目標とする値を決めています。例えば、年齢や性別、高血圧や糖尿病などの他の病気の有無、喫煙習慣といった動脈硬化の危険因子によって、目指すべき数値は一人ひとり異なります。
特に、すでに心筋梗塞や脳梗塞を発症したことがある方、あるいは糖尿病をお持ちの方は、将来の再発や合併症を防ぐため、より低いLDLコレステロール値を目指すことになります。これは、動脈硬化がさらに進行するのを食い止めるために非常に重要なことです。
数値の見方のポイント
LDLコレステロールが高い場合
血管内にコレステロールが溜まり、動脈硬化が進むリスクが高まります。
HDLコレステロールが低い場合
血管内の余分なコレステロールが回収されにくく、動脈硬化のリスクが高まります。
中性脂肪が高い場合
動脈硬化のリスクを高めるだけでなく、極端に高い場合は急性膵炎などのリスクにもつながります。
総コレステロールが高い場合
LDLコレステロールとHDLコレステロール、VLDLコレステロールなどを合わせた合計値です。
高い場合は注意が必要ですが、HDLコレステロールが高いことによる場合もあります。そのため、LDLとHDLの内訳をよく確認することが重要です。
健康診断で基準値から外れた指摘があった場合は、「自分は大丈夫だろう」と自己判断せずに、必ず医療機関を受診し、医師に相談するようにしてください。医師は、あなたの健康状態全体を考慮し、最適な目標値と治療方針を提案してくれます。定期的な検査と適切な管理が、将来の重大な病気を防ぐことにつながります。
高コレステロールが招く病気と原因
健康診断でコレステロール値の異常を指摘されたとき、「特に自覚症状もないから、大丈夫だろう」と軽く考えてしまう方は少なくありません。しかし、高コレステロールの状態は、あなたの血管の中で静かに、そして確実にダメージを与え続けています。この状態を放置すると、やがては命に関わる重大な病気を引き起こす可能性が高まります。
前章では、コレステロールが私たちの体に不可欠な成分であること、そして善玉と悪玉のバランスが重要であることを解説しました。この章では、そのバランスが崩れ、特に「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールが高い状態が続くと、どのような病気が引き起こされるのか、そのメカニズムと具体的な病気について、医師の視点から詳しく解説します。
脂質異常症とは?放置するリスクを解説
血液中のコレステロールや中性脂肪の値が、基準値から外れてしまう状態を「脂質異常症」と呼びます。以前は「高脂血症」という名称でしたが、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低すぎること自体も病気のリスクになるため、総称としてこの名前が使われるようになりました。
この脂質異常症を放置すると、血管の老化を早める「動脈硬化」が進行し、最終的には全身の様々な臓器に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
脂質異常症の主な種類
脂質異常症は、主に次の3つのタイプに分けられます。
高LDLコレステロール血症
肝臓から全身へコレステロールを運ぶ「悪玉コレステロール」が多すぎる状態です。
過剰なコレステロールが血管の壁にたまりやすくなります。
低HDLコレステロール血症
体内の余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す「善玉コレステロール」が少なすぎる状態です。
血管壁にコレステロールが蓄積されやすくなります。
高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)
中性脂肪が多すぎる状態です。
中性脂肪の増加は、動脈硬化を進行させる要因となります。
放置するリスク
脂質異常症は、初期にはほとんど自覚症状がありません。そのため、健診で指摘されても「特に困っていないから」と、医療機関を受診せずに放置してしまう方がいらっしゃいます。しかし、この「自覚症状がない」という点が、この病気の最も危険な側面です。
放置された脂質異常症は、静かに血管の壁に脂質をため込み続け、「動脈硬化」を進行させます。動脈硬化は、血管が狭く硬くなることで、やがて心筋梗塞や脳梗塞といった、命に関わる重篤な病気につながる可能性が極めて高まります。これらの病気は、発症してしまうと重い後遺症を残したり、最悪の場合には命を落とすことにもつながりかねません。
早期に診断を受け、適切な対策を始めることが、ご自身の健康な未来を守るために非常に重要です。
動脈硬化が進行するメカニズムと全身への影響
動脈硬化とは、全身に酸素や栄養を運ぶ重要な血管である動脈が、加齢や生活習慣の影響で硬くなったり、血管の内壁に脂質がたまったりして、本来のしなやかさや機能を失っていく状態を指します。高コレステロールの状態が続くと、この動脈硬化が加速し、体のさまざまな場所に影響を及ぼします。
動脈硬化の進行メカニズム
動脈硬化は、以下のような段階を経て進行していきます。
動脈硬化は、以下のような段階を経て進行していきます。
血管の内壁の傷つき
高血圧や高血糖、喫煙、加齢などが原因となり、血管の内側にある「内皮細胞」が傷つきやすくなります。
内皮細胞は、血管の内壁を保護し、血液の流れをスムーズに保つ役割を持っています。
LDLコレステロールの侵入と酸化
傷ついた血管の隙間から、増えすぎたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管壁の中に入り込みます。
血管壁に入り込んだLDLコレステロールは、酸化されて炎症を引き起こします。
炎症とプラーク形成
酸化したLDLコレステロールを処理しようと、「マクロファージ」という免疫細胞が集まってきます。
マクロファージはコレステロールを取り込み、「泡末細胞」という泡状の細胞になります。
この泡末細胞が血管壁の中でさらに集まり、「プラーク」と呼ばれる脂肪の塊を形成します。
プラークが大きくなると、血管の内側が盛り上がり、血管が狭くなります。
血管の硬化と破綻リスク
プラークが大きくなり、さらに線維組織や石灰(カルシウム)が付着すると、血管の壁が厚く硬くなります。
これにより血管はしなやかさを失い、血液の流れが悪くなるだけでなく、プラークが破れやすくなります。
プラークが破れると、血栓(血の塊)ができやすくなり、血管を詰まらせる原因となります。
この一連のプロセスは、自覚症状がないまま静かに進行します。
動脈硬化が全身へ及ぼす影響
動脈硬化は、体のあらゆる動脈で進行する可能性があります。特に影響が大きい臓器と、それによって引き起こされる病気は次の通りです。
脳
脳の血管で動脈硬化が進むと、脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患のリスクが高まります。
ろれつが回らない、片方の手足が痺れるといった症状が現れることがあります。
心臓
心臓に血液を送る「冠動脈」が動脈硬化で狭くなると、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。
運動時に胸が締め付けられる痛みを感じたり、突然激しい胸の痛みに襲われたりします。
腎臓
腎臓の血管の動脈硬化は、腎臓の働きを低下させ、むくみや高血圧の悪化、さらには腎不全につながることがあります。
下肢(足)
足の血管で動脈硬化が進むと、「閉塞性動脈硬化症」を発症します。
歩行時に足が痛む、しびれる、冷感があるなどの症状が現れ、重症化すると足の壊死につながる危険性もあります。
動脈硬化は、自覚症状が現れた時にはかなり進行していることが多いため、定期的な健診で早期に異常を見つけ、予防や改善に取り組むことが非常に重要です。
心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症
動脈硬化がさらに進行し、血管が詰まったり破れたりすると、生命を脅かす深刻な病気を引き起こします。その中でも代表的なものが「心筋梗塞」と「脳梗塞」です。これらの病気は、後遺症を残したり、最悪の場合には命を落とすこともあるため、予防が非常に大切です。
心筋梗塞(しんきんこうそく)
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしていますが、心臓自身も冠動脈という血管から血液の供給を受けています。心筋梗塞は、この冠動脈の動脈硬化が進み、血管壁のプラークが破裂して血栓(血の塊)が形成され、血管が完全に詰まってしまうことで起こります。血液が届かなくなった心臓の筋肉(心筋)の一部が壊死してしまう、非常に危険な状態です。
主な症状
突然の激しい胸の痛みや圧迫感、締め付けられるような感覚が起こります。
左肩やあご、背中へ痛みが広がる(放散痛)ことがあります。
呼吸困難、冷や汗、吐き気、意識が遠のく感じなどが伴うこともあります。
痛みが30分以上続くこともあります。
緊急性
発症後、一刻も早く医療機関を受診し、詰まった血管を再開通させる治療を行うことが不可欠です。
治療が遅れると、心臓に大きなダメージが残り、その後の生活に影響を与える可能性が高まります。
脳梗塞(のうこうそく)
脳梗塞は、脳の血管が動脈硬化で狭くなったり、血管にできた血栓、あるいは心臓から飛んできた血栓(塞栓)によって血管が詰まってしまう病気です。脳細胞に血液が届かなくなり、脳細胞が壊死してしまう、深刻な状態です。
主な症状
突然、片側の手足に麻痺やしびれが生じることがあります。
ろれつが回らない、言葉が出にくいなどの言語障害が起こります。
顔の片側が下がる(顔面麻痺)、めまい、視界の一部が欠ける、意識障害なども見られます。
緊急性
発症から数時間以内(「超急性期」と呼ばれます)に治療を開始することが、脳細胞のダメージを最小限に抑え、後遺症を軽減するために非常に重要です。
脳梗塞は「時間との勝負」となる病気であり、症状が現れたらすぐに救急車を呼ぶことが大切です。
他の生活習慣病との関連性
心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクは、高コレステロール血症だけでなく、他の生活習慣病とも密接に関連しています。
高血圧
血管に常に高い圧力がかかることで、血管壁が傷つきやすくなり、動脈硬化を加速させます。
糖尿病
血液中の血糖値が高い状態が続くと、血管の内皮細胞が損傷しやすくなり、動脈硬化の進行を早めます。
肥満
肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症の原因となることが多く、これらのリスクが重なることで、さらに心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを高めます。
これらの病気はそれぞれが動脈硬化を進行させる要因となり、互いに影響し合いながら、より深刻な状態へとつながっていきます。そのため、コレステロール値だけでなく、総合的に生活習慣病を管理することが重要です。
コレステロール値を改善する具体的な方法
健康診断でコレステロール値が高いと指摘され、「このままではいけない」「何から始めればいいのかわからない」と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。コレステロール値は、日々の生活習慣を見直すことで、多くの場合、良い方向へ改善することができます。ここでは、食事、運動、そして必要に応じて薬物療法を組み合わせながら、無理なくコレステロール値を管理し、健康的な生活を送るための具体的な方法について、内科専門医の視点から詳しく解説します。ご自身の状態に合わせて、できることから始めていきましょう。
食事療法でコレステロール値を下げるポイント
コレステロール値の改善において、食事は非常に重要な役割を果たします。単に食事量を減らすのではなく、何をどのように食べるかに焦点を当てることが大切です。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、コレステロール値の改善には、コレステロールや飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の摂取を控え、食物繊維や不飽和脂肪酸を積極的に摂る食生活が推奨されています。
具体的な食事療法のポイントを、一緒に見ていきましょう。
控えるべき脂質の種類と工夫
動脈硬化を進行させる「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」を増やしやすい脂質は、意識して摂取量を減らすことが大切です。
飽和脂肪酸(動物性の脂身に多い)
肉の脂身、バター、生クリーム、ラード、加工肉(ソーセージ、ベーコン)、
インスタント食品や菓子パンなどに多く含まれます。
工夫
肉はヒレ肉やささみなど、脂身の少ない部位を選びましょう。
鶏肉は皮を取り除くと、飽和脂肪酸を減らせます。
揚げ物よりは、蒸し料理、煮込み料理、グリル料理がおすすめです。
菓子パンやインスタント食品の摂取頻度を見直しましょう。
トランス脂肪酸(マーガリンなどに含まれる)
マーガリン、ショートニングを使ったお菓子やパン、
揚げ物などに含まれることがあります。
工夫
これらの食品の過剰な摂取を避けましょう。
植物油を使う際には、オリーブオイルや菜種油など、トランス脂肪酸の少ないものを選ぶと安心です。
コレステロール自体を多く含む食品
卵黄、魚卵(たらこ、いくら)、レバー、イカ、エビなど。
工夫
以前は厳しく制限されていましたが、コレステロールの摂取量が血中コレステロール値に直接影響する根拠は十分ではないとされています。
しかし、過剰摂取は避けるべきです。
卵は1日1個程度を目安にし、バランスの良い食事を心がけましょう。
積極的に摂りたい栄養素
血管を健康に保ち、コレステロール値を良い状態に導く栄養素を積極的に摂りましょう。
食物繊維
腸内でコレステロールの吸収を抑え、体外への排出を促す働きがあります。
食後の血糖値の急上昇を抑える効果も期待できます。
多く含む食品
野菜(ごぼう、きのこ、海藻、キャベツ、ブロッコリーなど)
豆類(納豆、豆腐、枝豆など)
全粒穀物(玄米、麦ごはん、全粒粉パンなど)
工夫
毎食、野菜やきのこを使った小鉢を一品増やすように意識しましょう。
ご飯を玄米や麦ごはんに変えるだけでも、食物繊維の摂取量を増やせます。
不飽和脂肪酸
血管の健康を保ち、悪玉コレステロールを減らし、
「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」を増やす効果が期待できます。
種類と多く含む食品
n-3系脂肪酸(DHA・EPA):サバ、イワシ、サンマなどの青魚
n-9系脂肪酸(オレイン酸):オリーブオイル、アボカド、ナッツ類
工夫
青魚は週に2~3回を目安に食卓に取り入れると良いでしょう。
調理油をオリーブオイルや菜種油に変えるのもおすすめです。
間食には、無塩のナッツ類を少量取り入れてみましょう。
食事改善のポイント | おすすめの食品・調理法 | 控えるべき食品・調理法 |
主食 | 玄米、麦ごはん、全粒粉パン、そば | 白米、菓子パン、インスタントラーメン |
肉類 | 鶏むね肉・ささみ(皮なし)、赤身肉 | 脂身の多い肉(バラ肉、ひき肉)、加工肉 |
魚類 | サバ、イワシ、サンマなどの青魚、マグロの赤身 | 魚卵(たらこ、いくら)、イカ、エビ |
乳製品 | 低脂肪乳、ヨーグルト | バター、生クリーム、チーズ(摂りすぎに注意) |
油 | オリーブオイル、菜種油、アマニ油 | ラード、マーガリン、ショートニング |
調理法 | 蒸す、煮る、焼く(油少なめ)、和える | 揚げる(特に頻繁な摂取) |
食事は毎日のことですから、完璧を目指すのではなく、「できる範囲で少しずつ変えていく」という意識が大切です。いきなり全てを変えようとすると挫折しやすいため、まずは一つのポイントから始めてみましょう。
毎日続けやすい!効果的な運動習慣
コレステロール値を改善するためには、食事療法と並んで運動習慣も非常に大切です。運動は、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らし、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす効果が期待できます。また、内臓脂肪の減少にもつながり、動脈硬化の予防にも役立ちます。
しかし、「運動が苦手」「忙しくて時間がない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。大切なのは、無理なく毎日続けられる運動を見つけることです。
コレステロール改善に効果的な運動とは
主に「有酸素運動」が推奨されます。有酸素運動とは、筋肉を収縮させるためのエネルギーを、酸素を使って脂肪を燃焼させることで生み出す運動です。
有酸素運動の効果
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らし、
善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす効果が期待できます。
中性脂肪を減らし、内臓脂肪を燃焼させる効果もあります。
心肺機能が高まり、血圧の改善にもつながります。
具体的な運動例
ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳、水中ウォーキング、
エクササイズバイク、ダンスなど。
目標
週に3~5日、1回30分程度の有酸素運動が理想的です。
運動時間はまとめて30分でなくても、10分を3回など、細切れにしても効果があります。
「ややきつい」と感じる程度の強度を意識しましょう。脈拍が少し速くなり、汗ばむ程度が目安です。
筋力トレーニングの併用
筋力トレーニングも基礎代謝を上げ、体脂肪を減らす効果が期待できます。
有酸素運動と組み合わせることで、より効果的なコレステロール管理が可能です。
毎日続けやすい運動習慣のヒント
運動を継続するには、日常生活に上手に取り入れることがポイントです。
「ながら運動」を取り入れる
歯磨き中にスクワットをする、テレビを見ながら足上げ運動を行うなど、
日常生活の隙間時間に体を動かしましょう。
通勤・通学を見直す
一駅分歩く、エスカレーターではなく階段を使う、
自転車通勤に変えるなど、意識的に活動量を増やします。
趣味と兼ねる
ガーデニング、ダンス、散歩、ヨガなど、
楽しみながら続けられる運動を見つけると良いでしょう。
軽い運動から始める
まずは1日10分程度のウォーキングから始めて、
慣れてきたら少しずつ時間や強度を増やしていくのが継続のコツです。
目標を設定する
「毎日30分歩く」「週に2回ジムに行く」など、具体的な目標を立てると、
モチベーションを維持しやすくなります。ただし、無理な目標は禁物です。
運動を始める前の注意点
もし心臓病や関節疾患など、持病をお持ちの場合は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。無理な運動はかえって体に負担をかけてしまう可能性があります。ご自身の体調や体力に合わせて、無理のない範囲で継続していくことが最も重要です。
薬物療法の種類と副作用、治療の必要性
食事療法や運動療法を続けてもコレステロール値がなかなか改善しない場合や、心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患のリスクが非常に高い場合には、薬物療法が検討されます。高コレステロール血症は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、将来的に命に関わる重篤な病気を引き起こす可能性があるため、医師が薬物療法を勧める場合は、将来の重大な病気を予防するために必要であると判断されたということです。
薬物療法は、医師の指示に従って適切に行うことが非常に重要です。
薬物療法が必要となる主なケース
生活習慣の改善を継続しても、目標とするコレステロール値に達しない場合
すでに心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を発症したことがある場合
糖尿病や高血圧など、他の動脈硬化の危険因子を複数合併している場合
家族性高コレステロール血症など、遺伝的な要因でコレステロール値が著しく高い場合
Non-HDLコレステロール値が高く、動脈硬化のリスクが高いと判断される場合
主な薬の種類と作用、副作用
薬剤の種類 | 作用のメカニズム | 主な効果 | 副作用の例 |
スタチン系薬剤 | 肝臓でコレステロールが作られるのを阻害し、血液中のコレステロール量を減らします。 | LDLコレステロールを強力に低下させる主要な薬剤です。 | 肝機能障害、筋肉痛(重症化すると横紋筋融解症)、糖尿病の発症リスク上昇 |
小腸コレステロール吸収阻害薬 | 食事や胆汁から分泌されたコレステロールが、小腸で吸収されるのを抑制します。 | LDLコレステロールを低下させます。 | 便秘、下痢、腹痛、肝機能障害 |
フィブラート系薬剤 | 肝臓での中性脂肪の合成を抑え、血液中の分解を促進する作用があります。 | 中性脂肪を低下させ、HDLコレステロールを上昇させます。 | 肝機能障害、筋肉痛、胆石 |
PCSK9阻害薬 | 新しいタイプの注射薬で、LDLコレステロールを分解する受容体を増やすことで、コレステロール値を下げます。 | 非常に強力にLDLコレステロールを低下させます。 | 注射部位反応、インフルエンザ様症状、神経筋疾患 |
その他(EPA製剤、陽イオン交換樹脂など) | それぞれの作用機序で、コレステロール値や中性脂肪値を改善します。 | LDLコレステロール、中性脂肪の低下など。 | 消化器症状、皮膚の紅潮、出血傾向など |
治療の必要性について
「自覚症状がないのに薬を飲み続けるのは抵抗がある」と感じる方も少なくありません。しかし、薬物療法は、将来の心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気を予防し、健康寿命を延ばすために非常に重要な役割を担っています。これらの病気は、一度発症すると生活の質を著しく低下させたり、命に関わったりする可能性が高いのです。
薬を始める際には、医師から薬の種類、効果、副作用について十分に説明を受けてください。疑問点があれば遠慮なく質問しましょう。また、服薬中に体調の変化(特に筋肉痛や倦怠感など)を感じた場合は、自己判断で服薬を中断せずに、速やかに主治医に相談することが大切です。医師と二人三脚で、ご自身の健康を守っていきましょう。
年齢・性別で異なるコレステロール管理の注意点
コレステロール値は、年齢や性別によって変動する傾向があり、それぞれのライフステージに応じた管理が重要になります。医師の立場からも、個々の患者さんの背景を考慮したきめ細やかなアプローチが大切だと考えています。
若年層(特に小児・思春期)
特徴
小児期の高コレステロール血症は、主に遺伝的要因、
特に「家族性高コレステロール血症」によるものが多く見られます。
このタイプは動脈硬化が若いうちから進行するリスクがあり、早期発見・介入が極めて重要です。
注意点
親族に高コレステロール血症、あるいは若年での心筋梗塞や脳梗塞の既往がある場合は、
小児期からのコレステロール検査が強く推奨されます。
生活習慣の改善が基本ですが、場合によっては専門医による薬物療法が、
小児期から検討されることもあります。
健診などで指摘された場合は、「まだ若いから大丈夫」と自己判断せずに、
必ず小児科や内科で詳しい検査と相談をしてください。
成人期(20代~50代)
特徴
生活習慣の乱れ(不適切な食生活、運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなど)が、
コレステロール値に大きく影響し始める時期です。
働き盛りの世代では、多忙による食生活の偏りや運動不足が顕著になる傾向があります。
注意点
健康診断の結果を毎年確認し、コレステロール値の推移に注意を払いましょう。
この時期にコレステロール値が高くなると、将来の動脈硬化性疾患のリスクが上昇します。
早めに生活習慣を見直し、改善に取り組むことが、将来の健康を守る上で非常に重要です。
特に自覚症状がないからと放置せず、気になる点があればかかりつけ医に相談しましょう。
女性のコレステロール値の変化
特徴
女性は閉経前まで、女性ホルモン(エストロゲン)の働きにより、
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が上がりにくく、
善玉コレステロール(HDLコレステロール)が高い傾向にあります。
エストロゲンには、血管を保護し、コレステロール代謝を良好に保つ作用があるためです。
しかし、閉経後はエストロゲンが減少するため、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。
注意点
閉経後はコレステロール値が大きく変動する可能性があるため、
定期的な健診がより重要になります。
ホルモンバランスの変化に伴い、生活習慣の乱れがないか確認し、
必要に応じて食事や運動を見直しましょう。
医師と相談し、閉経後のリスクについて理解を深めることが大切です。
必要に応じてホルモン補充療法が検討されることもあります。
高齢者(65歳以上)
特徴
加齢とともにコレステロール値は上昇傾向にあります。
動脈硬化も進行していることが多いため、慎重な管理が必要です。
しかし、過度なコレステロールの低下は、低栄養やサルコペニア(筋肉減少症)のリスクを高める可能性もあります。
注意点
高齢者においては、コレステロール値をどこまで厳しく管理するか、
個々の健康状態、併存疾患、日常生活の活動度などを考慮して、
医師と十分に相談して決定します。
過度な食事制限は、栄養不足につながるリスクもあるため、
バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素をしっかり摂ることが大切です。
転倒リスクや体力も考慮した上で、無理のない範囲で運動を継続することも重要です。
年齢や性別によってコレステロール管理の重点は異なります。ご自身のライフステージに合わせた適切な管理を行うためにも、定期的に医療機関を受診し、医師や管理栄養士と相談しながら、最適な方法を見つけていきましょう。
コレステロールQ&A
コレステロールについて、患者さんからよくいただく疑問や不安を解消できるよう、内科専門医の視点から詳しく解説します。
Q1:コレステロールは食事で気を付ければ必ず下がりますか?
A1: コレステロール値は、食事だけでなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って決まります。運動不足、喫煙、そして遺伝的な体質なども大きく影響するのです。
私たちの体内で必要とされるコレステロールの大部分は、肝臓や小腸で合成されています。食事から摂取する量は、実は全体のごく一部に過ぎません。体は食事からの摂取量に応じて、体内で作る量を調整する機能を持っています。そのため、単に食事のコレステロールを控えるだけでは、なかなか改善しないケースがあるのも事実です。
しかし、脂質異常症の重症化を予防するため、日本人の食事摂取基準(2025年版)では、コレステロール摂取量を1日200mg未満に留めることが望ましいとされています。
令和元年度の国民健康・栄養調査によると、成人男性は平均約314~399mg/日、女性は約295~334mg/日を摂取しており、推奨値よりも多く摂っている傾向が見られます。
コレステロールの主な摂取源は、卵類が約半分を占めるほか、肉類や魚介類からも多く摂られています。
そのため、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増やしやすい動物性の飽和脂肪酸を控え、血管の健康を保つ食物繊維や不飽和脂肪酸(青魚に豊富なDHAやEPAなど)をバランス良く摂ることが大切です。
また、高齢の方では、過度な食事制限がたんぱく質不足や低栄養を招く可能性もあります。ご自身の体質や食生活に合わせた具体的なアドバイスは、ぜひ当クリニックにご相談ください。
Q2:健診でコレステロールが高いと指摘されましたが、自覚症状がありません。すぐに治療が必要ですか?
A2: コレステロールが高い状態、特に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い状態は「脂質異常症」と呼ばれます。この病気の最も危険な点は、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことです。
しかし、症状がなくても、残念ながら血管の内部では深刻な変化が静かに進行しています。増えすぎたLDLコレステロールは血管の壁にたまり、血管を硬く狭くする「動脈硬化」を加速させてしまうのです。
動脈硬化が進行すると、将来的に命に関わる重大な病気、例えば次のようなリスクが高まります。
心臓の病気
心臓に血液を送る血管が詰まる「心筋梗塞」
血管が狭くなることで胸の痛みが生じる「狭心症」
脳の病気
脳の血管が詰まる「脳梗塞」
脳の血管が破れて出血する「脳出血」
これらの病気は、一度発症してしまうと重い後遺症が残ったり、最悪の場合には命を落とす危険性もあります。そのため、自覚症状がないからといって放置せず、早めに医療機関を受診し、医師と相談して適切な対策を始めることが、ご自身の健康な未来を守るために非常に大切です。
Q3:コレステロールを下げる薬は、一度飲み始めたら一生飲み続けなければいけませんか?
A3: コレステロールを下げるお薬は、体内のコレステロール値を適切に保ち、動脈硬化の進行を抑えるために処方されます。これは、将来の心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気を予防し、健康寿命を延ばすための大切な治療です。
服用期間は、患者さんのコレステロール値の目標や、他の病気の有無などによって異なります。生活習慣の改善を継続し、コレステロール値が目標範囲内で安定すれば、医師の判断で薬の量を減らしたり、中止できる場合もあります。
しかし、自己判断で服用を中断すると、コレステロール値が再び上昇し、動脈硬化が進行してしまう危険性があるため注意が必要です。お薬の服用期間や減量・中止のタイミングについては、必ず主治医とよく相談し、医師の指示に従うようにしてください。当クリニックでは、患者さんの状態を定期的に評価し、最適な治療方針を一緒に考えていきます。
Q4:高齢者ですが、コレステロール値の目標は若者と同じですか?
A4: 高齢者のコレステロール管理については、若年層とは異なる配慮が必要となる場合があります。
高齢の方では、コレステロール値をあまりにも厳しく管理しすぎると、かえって次のようなリスクが高まる可能性が指摘されています。
低栄養状態
食事制限により必要な栄養素が不足してしまうことがあります。
サルコペニア(筋肉減少症)
筋肉量が減少し、転倒やフレイル(虚弱)のリスクが高まります。
そのため、高齢者の方のコレステロール値の目標は、年齢、性別、全体的な健康状態、併存疾患(高血圧や糖尿病など)、日常生活の活動度などを総合的に考慮して、一人ひとりに合った目標値が設定されます。
過度な食事制限は栄養不足につながるリスクもあるため、バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素をしっかり摂ることが大切です。また、転倒リスクや体力も考慮した上で、無理のない範囲で運動を継続することも重要になります。
ご自身の年齢や健康状態に合わせた適切なコレステロール値の目標については、必ずかかりつけの医師とよく相談し、最適な管理方法を見つけていきましょう。
Q5:家族もコレステロールが高いのですが、遺伝も関係しますか?
A5: はい、コレステロール値には遺伝的な体質も関係していることが分かっています。
特に、「家族性高コレステロール血症」という遺伝性の病気では、生まれつき悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が非常に高い状態になります。この病気は、若い頃から動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞などを発症するリスクが高いことが特徴です。
ご家族の中に高コレステロール血症の方が複数いる場合や、若くして心筋梗塞や脳梗塞を発症した方がいる場合は、遺伝的な要因も強く考えられます。
ご心配な場合は、一度医療機関を受診して、遺伝的な要因についても相談し、適切な検査やアドバイスを受けることをおすすめします。遺伝的な要因がある場合でも、食事や運動などの生活習慣の改善は非常に重要であり、適切な管理を行うことで、将来の病気のリスクを軽減することができます。
まとめ
今回は、コレステロールの役割や、高値が招く病気、そして改善方法について解説しました。コレステロールは私たちの体に不可欠な成分ですが、特に悪玉コレステロール(LDL)が高い状態が続くと、自覚症状がないまま動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気につながる可能性があります。しかし、日々の食生活の見直しや適度な運動、ストレス管理といった生活習慣の改善によって、多くの場合コレステロール値を良い方向に導くことができます。健康診断で指摘されたら、放置せずに早めに医療機関に相談し、ご自身のコレステロール値と向き合いましょう。あなたの健康な未来のために、今からできることを見つけていきましょう。
参考文献
日本人の食事摂取基準(2025年版)
脂質異常症ガイドライン


