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高血圧の治療における血圧の目標値はいくつ?

  • 2月11日
  • 読了時間: 19分

高血圧と診断され、「自分の血圧はどこまで下げれば良いのだろう?」と疑問に思っていませんか。治療の本当の目的は、将来の脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を防ぐことです。そして、そのために目指すべき血圧の目標値は、実はすべての人に同じ数値が当てはまるわけではありません。


例えば75歳未満の方、75歳以上の方、そして糖尿病や腎臓病をお持ちの方では、推奨される目標値が異なります。これは、一人ひとりの状態に合わせて最も安全で効果的な治療を行う「個別化治療」という考え方に基づいています。


この記事では、最新のガイドラインに沿って、あなたの状況に合った最適な血圧目標値を分かりやすく解説します。ご自身の正しい目標を知ることが、効果的な治療への確かな第一歩となるでしょう。



あなたの血圧目標値はいくつ?年齢・合併症別の基準を解説

「高血圧と診断されたけれど、自分の血圧はどこまで下げれば良いのだろう?」

多くの方がこのような疑問を抱くことでしょう。


高血圧治療の目標は、単に数値を下げることではありません。

将来起こりうる脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を防ぐことです。


実は、この治療目標となる血圧の値は、すべての人に同じ数値が当てはまるわけではありません。

年齢や、糖尿病、腎臓病といった他の病気の有無、さらには個人の体力などを総合的に考慮し、一人ひとりに最適な目標値が設定されます。

これを「個別化治療」と呼びます。


この記事では、あなたの状況に合わせた血圧目標値の目安を、最新のガイドラインに基づいて分かりやすく解説します。

ご自身の目標を知ることが、効果的で安全な治療への第一歩です。



75歳未満の基本的な降圧目標

75歳未満の成人の方では、将来の心血管病(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクをしっかりと下げるため、比較的厳格な血圧目標が推奨されています。


日本の「高血圧治療ガイドライン2019」では、以下の目標が示されています。

測定場所

収縮期血圧(上の血圧)

拡張期血圧(下の血圧)

診察室で測定

130 mmHg 未満

80 mmHg 未満

ご家庭で測定

125 mmHg 未満

75 mmHg 未満

家庭血圧が治療の主役になる理由

この表で特に注目すべきは、ご家庭で測る「家庭血圧」の目標値です。

診察室での血圧よりも低い目標値が設定されているのには、明確な理由があります。


研究により、家庭血圧は診察室血圧よりも、将来の脳卒中や心筋梗塞の発症をより正確に予測できることがわかっています。

そのため、現在の高血圧治療では家庭血圧の値を最も重視します。


病院では緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」は有名です。

一方で、より注意が必要なのが、その逆の「仮面高血圧」です。これは、診察室では正常なのに、家庭や職場では血圧が高い状態を指します。

仮面高血圧は、常に血圧が高い方と同じくらい心血管病のリスクが高いことが知られており、見逃さずに治療を開始する必要があります。


毎日の血圧測定を習慣づけ、普段の本当の血圧を把握することが、治療において非常に重要なのです。


75歳以上の高齢者に設定される目標値

75歳以上の方の場合、血圧の目標値は少し緩やかに設定されるのが基本です。

これは、血圧を下げすぎることが、かえって健康上のリスクを高める可能性があるためです。


安全に治療を続けることを第一に考え、慎重な目標設定が行われます。

測定場所

収縮期血圧(上の血圧)

拡張期血圧(下の血圧)

診察室で測定

140 mmHg 未満

90 mmHg 未満

ご家庭で測定

135 mmHg 未満

85 mmHg 未満

ただし、これはあくまで一般的な目標です。

もし、降圧薬によるふらつきなどの副作用がなく、ご本人が治療に耐えられる(忍容性がある)と医師が判断した場合には、75歳未満の方と同じ、より厳格な目標(診察室血圧130/80mmHg未満)を目指すこともあります。


ご高齢の方の治療では、画一的な目標を当てはめることはしません。

体力や他の病気の状態、筋力が低下して虚弱になった状態である「フレイル」の有無などを総合的に評価し、一人ひとりに合った血圧管理を行うことが重要になります。


糖尿病や慢性腎臓病がある場合の特別な目標値

糖尿病や慢性腎臓病(CKD)を合併している方は注意が必要です。これらの病気がない方と比べて、脳卒中や心筋梗塞、腎機能の悪化といったリスクが非常に高くなるためです。

そのため、合併症の予防と進行抑制を目的として、より厳格な血圧管理が求められます。目標値は、75歳未満の方と同じ基準が適用されます。

測定場所

収縮期血圧(上の血圧)

拡張期血圧(下の血圧)

診察室で測定

140 mmHg 未満

90 mmHg 未満

ご家庭で測定

135 mmHg 未満

85 mmHg 未満

これらの病気をお持ちの場合、高血圧は動脈硬化を強力に推し進めます。特に腎臓は、細い血管の塊のような臓器です。高い圧力がかかり続けると、腎臓の血管が傷つき、腎機能がさらに悪化するという悪循環に陥りやすくなります。

血圧を目標値までしっかり下げることは、心臓や脳だけでなく、大切な腎臓を守ることにも直結するのです。そのため、早期から生活習慣の改善とともに、複数の種類の降圧薬を組み合わせて治療を行うことも少なくありません。


なぜ人によって目標値が違うのか?個別化治療の重要性

これまで見てきたように、高血圧治療の目標値は、年齢や合併症の有無によって大きく異なります。もし、すべての人に同じ厳しい目標値を当てはめてしまうと、かえって健康を損なうリスクが生じる場合があるからです。

高血圧治療で「個別化」が重要視される主な理由をまとめます。


  • 年齢による身体の変化 

    高齢になると、血圧の急な変動に体が対応しにくくなります。 血圧を下げすぎると、脳への血流が一時的に不足してめまいを起こしたり、転倒して骨折につながったりする危険性が高まります。


  • 合併症によるリスクの違い 

    糖尿病や腎臓病は、それ自体が動脈硬化を強く促進する危険因子です。 これらのリスクが高い方には、より厳格な血圧管理を行い、将来の重大な病気を徹底して予防する必要があります。


  • 個人の全身状態(フレイルなど) 

    全身の筋力や活力が低下している「フレイル」の状態の方に、若い方と同じ強さの降圧治療を行うと、副作用が強く出てしまう可能性があります。 一人ひとりの体力や生活状況に合わせたきめ細やかな調整が不可欠です。


このように、高血圧治療はまさにオーダーメイドです。医師は、患者さん一人ひとりの背景を総合的に判断し、最も安全で効果的な治療目標を提案します。ご自身の目標値を正しく理解し、医師とよく相談しながら、二人三脚で治療を進めていきましょう。



目標値達成のための具体的な治療法と薬の疑問

ご自身の血圧の目標値がわかると、次に「どうすればその目標を達成できるのか」という疑問が浮かぶはずです。高血圧の治療は、生活習慣の見直しという土台の上に、必要に応じてお薬(降圧薬)を組み合わせるのが基本です。

これらはどちらか一方だけ頑張れば良いというものではありません。両方を車の両輪のようにうまく回していくことが、目標達成への近道となります。ここでは、具体的な治療法と、多くの方が抱えるお薬の疑問について詳しく解説します。


まずは生活習慣の改善から!食事と運動のポイント

高血圧治療において、生活習慣の改善はすべての基本であり、最も重要な治療法です。たとえ降圧薬による治療が始まっても、この土台がなければ薬の効果は半減してしまいます。食事と運動を中心に、ご自身の生活を振り返ってみましょう。


1. 食事療法の要は「減塩」と「カリウム」

食事で最も意識すべきなのは、食塩の摂取量を減らす「減塩」です。日本人の食塩摂取量は平均で1日約10gと言われており、目標とされる1日6g未満を大きく上回っています。

食事療法のポイント

具体的なアクションプラン

減塩を徹底する

・麺類の汁は飲まずに残す習慣をつける


・醤油やソースは「かける」のではなく「つける」


・漬物や加工食品(ハム、練り物)の頻度を減らす


・昆布やかつお節のだし、香辛料、香味野菜で風味を足す

カリウムを摂取する

・カリウムは体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿として排出するのを助けます


・野菜(ほうれん草、かぼちゃ)、果物(バナナ、アボカド)、海藻類、いも類に豊富です

バランスの良い食事

・魚、特に青魚(サバ、イワシなど)に含まれるEPAやDHAは血管に良い影響を与えます


・肉の脂身やバターなどの飽和脂肪酸を控えめにする

※腎臓の機能が低下している方は、カリウムの摂取制限が必要な場合があります。必ず主治医に確認してください。


2. 運動療法でしなやかな血管を目指す

適度な運動は、血管を広げ、血圧を下げる効果が科学的に証明されています。また、糖尿病や脂質異常症の予防・改善にもつながり、まさに一石二鳥です。

運動療法の種類

目安となる頻度・時間

有酸素運動


(ウォーキング、軽いジョギング、水泳など)

・「ややきつい」と感じるくらいの強度で、できれば毎日30分以上を目標にします


・まとまった時間がなければ、10分以上の運動を数回に分けても効果はあります

これまで運動習慣がなかった方は、急に激しい運動を始めるのは危険です。

まずは散歩から始めるなど、無理のない範囲で継続することが何よりも大切です。

運動を始める前には、一度主治医に相談することをお勧めします。


降圧薬はいつから必要?種類と副作用について

生活習慣の改善を続けても血圧が目標値まで下がらない場合、薬物療法を検討します。また、血圧の値だけでなく、その方の持つリスクに応じて、早期から治療を開始することもあります。

降圧薬を始めるタイミング薬物療法の開始時期は、患者さんのリスクによって異なります。


  • 低・中等リスクの方

    まずは生活習慣の改善に1〜3ヶ月ほど取り組み、その効果を見てから薬物療法を検討します。


  • 高リスクの方(糖尿病、腎臓病、心血管病の既往など)

    将来の重大な病気を防ぐため、生活習慣の改善と同時に、ただちに薬物療法を開始することが推奨されます。


降圧薬の主な種類と選択降圧薬には多くの種類があり、それぞれ血圧を下げる仕組みが異なります。

医師は、患者さんの年齢や合併症、ライフスタイルなどを総合的に判断し、最適な薬を選択します。

薬の種類

主な働きと特徴

カルシウム拮抗薬

血管の筋肉を緩めて広げ、血液の通り道をスムーズにして血圧を下げます。

ARB / ACE阻害薬

体内で血圧を上げる物質の働きをブロックし、血管の収縮を防ぎます。

利尿薬

尿量を増やして体内の余分な塩分と水分を排出し、血液量を減らして血圧を下げます。

β遮断薬

心臓の拍動を少しゆっくりにさせ、心臓から送り出す血液の量を抑えて血圧を下げます。

最初は1種類の薬から始めることが多いですが、目標値に届かない場合は、作用の異なる薬を2〜3種類組み合わせることも少なくありません。


副作用が心配な方へ

どんな薬にも副作用の可能性はありますが、過度に心配する必要はありません。

降圧薬でみられる主な副作用には、めまい、ふらつき、咳、足のむくみなどがあります。

気になる症状が出た場合は、決して自己判断で薬をやめず、必ず主治医や薬剤師に相談してください。薬の種類を変更したり、量を調整したりすることで対応できる場合がほとんどです。



血圧が下がりすぎた(低血圧)場合の症状と対処法

降圧薬の治療で、まれに血圧が目標値よりも下がりすぎてしまうこと(過降圧)があります。

特に高齢の方や、もともと体が弱っている方(フレイル)、夏場に汗を多くかいて脱水気味の時などは注意が必要です。


血圧が下がりすぎた時のサイン(症状)

以下のような症状は、血圧が下がりすぎているサインかもしれません。


  • 立ちくらみ・めまい:立ち上がった瞬間にクラッとする

  • ふらつき:歩いている時に足元がおぼつかない

  • 倦怠感:体に力が入らない、強いだるさを感じる

  • 頭痛:頭が重い、ズキズキ痛む

  • 失神:気を失いそうになる、実際に失神する


家庭での対処法と受診の目安もし、上記のような症状を感じたら、慌てずにまずは転倒しないよう安全な場所で横になってください。

足をクッションなどの上に乗せて心臓より少し高くすると、脳への血流が保たれやすくなります。


一時的な症状で、安静にしてすぐに改善するなら様子を見ても構いません。

しかし、症状が頻繁に起こる、なかなか改善しない、あるいは一度でも失神したという場合は、すぐに主治医に連絡するか、医療機関を受診してください。

治療を始めたばかりの時期や薬の内容が変わった時は、特に注意深くご自身の体調を観察しましょう。



多くの人が抱える高血圧治療の3つの誤解

高血圧の治療について、多くの方が疑問や不安を抱えています。

ご家族やインターネットの情報から、様々な話を見聞きすることでしょう。


「一度薬を飲み始めたら、一生やめられないのでは?」

「特に症状がないのに、本当に治療が必要なのだろうか?」


このような思い込みは、適切な治療への一歩をためらわせる原因になります。

ここでは、高血圧治療で特に多い3つの誤解を取り上げ、正しい知識を解説します。

正しい理解は、ご自身の健康を守り、前向きに治療を続けるための羅針盤となります。



誤解1「薬を飲み始めたら一生やめられない」は本当か

「降圧薬(血圧を下げる薬)は一度飲み始めたら、一生やめられない」

これは、治療をためらう大きな理由の一つですが、必ずしも事実ではありません。


結論から言うと、薬をやめられる可能性は十分にあります。

ただし、それには「高血圧になった根本原因を解決する」という条件が必要です。

医師の指導のもと、生活習慣を改善し血圧が安定すれば、薬の減量や中止も可能です。


なぜ薬をやめられるケースがあるのか

高血圧の多くは、食生活や運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が原因です。

降圧薬は、いわば対症療法であり、上がっている血圧を一時的に下げてくれます。

しかし、根本原因である生活習慣がそのままだと、薬をやめれば血圧は元に戻ります。


逆に言えば、生活習慣の改善という根本治療にしっかり取り組めば、薬の助けが不要になる状態を目指せるのです。


薬の中止を目指すための具体的なステップ

ステップ

取り組むこと

Step 1. 生活習慣の徹底改善

・医師や管理栄養士の指導のもと、1日6g未満の減塩を目標とする


・野菜や果物からカリウムを摂取し、余分な塩分を排出する


・ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化する(毎日30分が目標)


・適正体重まで減量し、維持する

Step 2. 血圧の長期的な安定

・家庭血圧を毎日測定し、記録する


・薬を飲んでいる状態で、目標血圧(例:125/75mmHg未満)を長期間(目安として3ヶ月以上)安定して下回る状態を目指す

Step 3. 医師による慎重な判断

・安定した血圧の記録をもとに、医師が薬の減量を検討する


・さらに血圧が安定していれば、中止を検討する

最も重要なのは、自己判断で薬を絶対にやめないことです。

急に中断すると、血圧が以前よりも急上昇する「リバウンド現象」を招くことがあります。

これは脳卒中などの危険な状態を引き起こしかねません。薬の調整は、必ず医師と相談しながら二人三脚で進めましょう。


誤解2「症状がないから治療は不要」が最も危険な理由

高血圧は、自覚症状がほとんどないまま静かに進行します。そのため、「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」という異名を持ちます。


「特に体調は悪くないから大丈夫」という考えが、最も危険な落とし穴です。症状がない間に、あなたの血管は悲鳴を上げることなく、日々ダメージを受け続けています。そしてある日突然、命に関わる重大な病気を引き起こすのです。


症状がない間に、血管で起きていること高い圧力に常にさらされた血管は、壁が厚く硬くなる「動脈硬化」を起こします。しなやかさを失った血管は、もろく、破れやすくなったり、詰まりやすくなったりします。この変化が、全身の臓器に深刻なダメージを与えるのです。


高血圧が引き起こす取り返しのつかない合併症

影響を受ける臓器

起こりうる病気

どのような状態か

脳卒中


(脳梗塞・脳出血)

脳の血管が詰まったり、破れたりする。


麻痺や言語障害など、深刻な後遺症を残すことが多い。

心臓

心筋梗塞・狭心症

心臓を養う血管が詰まり、心臓の筋肉が壊死する。


突然死の原因にもなる。


心不全・心肥大

高い圧力に抗って血液を送り出すため心臓が疲弊し、機能が低下する。

腎臓

腎不全

細い血管の塊である腎臓がダメージを受け、機能しなくなる。


進行すると人工透析が必要になる。

高血圧網膜症

眼の奥にある網膜の血管が傷つき、視力低下や失明に至ることもある。

これらの病気は、一度発症すると生活の質(QOL)を著しく低下させます。症状がない段階から血圧を管理することこそが、将来の健康を守る最も有効な投資なのです。健康診断などで高血圧を指摘されたら、決して放置せず医療機関を受診してください。


誤解3「血圧はとにかく低ければ低いほど良い」の落とし穴

「血圧は低い方が健康」というイメージから、治療目標も低ければ低いほど良いと思っていませんか。実はこれも誤解で、特に高齢の方などでは血圧の下げすぎが、かえって危険を招くことがあります。

全身の臓器や筋肉は、血液によって運ばれてくる酸素や栄養素を頼りに活動しています。血圧は、この血液を全身の隅々まで送り届けるための「圧力」です。この圧力が低くなりすぎると、重要な臓器への血流が不足し、様々な不調が現れます。


血圧を下げすぎた(過降圧)時に起こる症状

症状

なぜ起こるのか

特に注意が必要なこと

めまい・ふらつき

脳への血流が一時的に不足するため。

転倒して骨折するリスクが高まる。


特に高齢者では寝たきりの原因になりうる。

立ちくらみ

急な体勢の変化に血圧の調整が追いつかないため。

起立性低血圧とも呼ばれる。

強い倦怠感・だるさ

全身の筋肉や臓器への血流が低下するため。

活動意欲が低下し、生活の質が下がる。

腎機能の悪化

腎臓への血流が減少し、ろ過機能が低下することがある。

定期的な血液検査での確認が重要。

このような理由から、高血圧治療では、一人ひとりの状態に合わせた「個別化治療」が行われます。特に以下のような方は、慎重な血圧コントロールが必要です。


  • 75歳以上のご高齢の方

    動脈硬化により、血圧の変動を調整する機能が低下していることが多いです。


  • フレイル(虚弱)の状態の方

    筋力や活力が低下しており、副作用の影響を受けやすくなっています。


  • 脳梗塞の既往がある方

    脳の太い血管に狭窄があると、血圧を下げすぎることで脳血流が低下し、再発のリスクとなる場合があります。


治療の目標は、単に数値を下げることではありません。あなたの体にとって最も安全で、将来の病気を効果的に予防できる「最適な血圧」を維持することです。医師とよく相談し、あなただけの治療目標を目指しましょう。



まとめ

今回は、高血圧治療における血圧の目標値について解説しました。ご自身の状況に合わせた目標を知ることが、治療の第一歩です。この記事の特に重要なポイントを、改めて確認しましょう。

押さえるべき重要ポイント

なぜ大切なのか

目標値はオーダーメイド

年齢や糖尿病などの合併症により、目指すべき血圧は一人ひとり異なります。あなたに最適な目標値を設定することが、安全で効果的な治療につながります。

主役は「家庭血圧」

診察室の血圧より、ご家庭で測る血圧の方が将来の脳卒中や心筋梗塞のリスクをより正確に反映します。毎日の測定習慣が何より重要です。

治療は生活習慣が土台

減塩や運動は、薬の効果を高めるための土台です。薬物療法と生活習慣の改善は、治療の両輪としてどちらも欠かせません。

症状の有無は関係ない

高血圧は自覚症状がないまま血管を傷つける「サイレント・キラー」です。症状がない今だからこそ、治療を始める価値があります。

高血圧の治療は、単に数値を下げる作業ではありません。将来の健康を守り、あなたらしい生活を長く続けるための大切な投資です。この記事をきっかけにご自身の血圧に関心を持ち、専門医に相談して、あなたに合った治療を一緒に始めていきましょう。



高血圧の治療目標Q&A

高血圧の治療を進める中で、多くの患者さんが抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。



Q1. 血圧の薬は、一度飲み始めたら一生やめられないのですか?

必ずしも一生飲み続けるわけではありません。高血圧の根本原因である生活習慣を改善できれば、薬を減らしたり、やめたりすることも十分に可能です。


具体的には、減塩(1日6g未満)や運動習慣の定着、5%程度の減量などにより血圧が目標値より下がり、その状態が長期間安定すれば、医師が薬の中止を検討します。ただし、自己判断で中断すると、血圧が急上昇(リバウンド)し、脳卒中などを引き起こす危険があります。薬の調整は、必ず医師と相談しながら進めてください。


Q2. 病院で測ると高い「白衣高血圧」。家では正常なら大丈夫ですか?

注意が必要です。診察室でのみ血圧が高い状態を「白衣高血圧」と呼びます。すぐに薬物治療の対象とはなりませんが、将来、持続する高血圧に移行しやすいため、定期的な経過観察が欠かせません。


より危険なのは、その逆の「仮面高血圧」です。診察室では正常なのに、家庭や職場では高い状態で、見逃されやすいのが特徴です。仮面高血圧は、常に血圧が高い方と同じくらい脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いことが分かっており、積極的な治療が必要です。

血圧のタイプ

診察室血圧

家庭血圧

リスクと対応

正常血圧

正常

正常

定期的な健康診断を継続しましょう。

白衣高血圧

高い

正常

経過観察と家庭血圧の測定が重要です。

仮面高血圧

正常

高い

リスクが高く、積極的な治療が必要です。

持続性高血圧

高い

高い

生活習慣の改善と薬物治療が必要です。

Q3. 降圧薬の副作用には、どのようなものがありますか?

降圧薬には多くの種類があり、副作用も薬によって異なります。例えば、咳、足のむくみ、めまい、ふらつきなどが見られることがあります。しかし、これらの副作用はすべての人に起こるわけではありません。


気になる症状が出た場合でも、自己判断で薬をやめないでください。医師に相談すれば、薬の種類を変更したり、量を調整したりすることで、ほとんどの場合は対応可能です。例えば、咳が出やすい薬から出にくい薬へ変更するなど、あなたに合った処方を一緒に見つけていきます。


Q4. なかなか目標値まで血圧が下がりません。どうすれば良いですか?

目標値に届かない場合、いくつかの原因が考えられます。まずは、ご自身の生活習慣をもう一度見直してみましょう。


  • 隠れた塩分

    加工食品や外食に頼っていませんか?


  • 薬の飲み忘れ

    毎日決まった時間に飲めていますか?


  • 他の影響

    市販の風邪薬や鎮痛剤が血圧を上げることもあります。


  • 睡眠不足やストレス

    これらも血圧を上げる大きな要因です。


生活習慣を見直しても改善しない場合は、薬の変更や追加を検討します。作用の異なる複数の薬を組み合わせることで、効果的に血圧を下げられる場合も多いです。あきらめずに、主治医と一緒に治療を続けましょう。


Q5. 親が高血圧だと、自分も必ず高血圧になりますか?

「高血圧そのもの」が遺伝するわけではありません。

遺伝するのは、あくまで「高血圧になりやすい体質」です。


ご家族に高血圧の方がいる場合、確かにリスクは高まります。しかし、遺伝的な要因以上に、食生活や運動習慣といった生活環境の影響が大きいことも事実です。たとえ遺伝的な素因があっても、若いうちから生活習慣を整えることで、発症を予防したり、発症を遅らせたりすることが可能です。ご家族の病歴は、ご自身の健康を見直す良いきっかけと捉えましょう。



まとめ

高血圧の治療は、単に数値を下げることだけが目的ではありません。将来起こりうる脳卒中や心筋梗塞を防ぎ、あなたらしい毎日を長く続けるための大切な投資です。


大切なのは、年齢や持病によって一人ひとり違う「オーダーメイドの目標値」を知ること。そして、日々の「家庭血圧」を測定し、ご自身の本当の状態を把握することです。


治療の基本は、減塩や運動といった生活習慣の改善であり、お薬はその土台の上に成り立ちます。高血圧は症状がないまま静かに進行します。症状がない今だからこそ、この記事をきっかけに専門医へ相談し、あなたに合った治療を一緒に始めていきましょう。



参考文献

  • 高血圧ガイドライン2019

 
 
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